オーストリアってどんなところ?
オーストリアの基本情報
オーストリアは中央ヨーロッパの南部に位置する連邦国家で、東アルプスからドナウ川流域にかけて広がる9つの州から構成されています。
正式名称はオーストリア共和国、首都は国土西部に位置するウィーン(Vienna)です。国土面積は北海道とほぼ同じ大きさにあたる約83,900平方kmで、そのうち約3分の2が山地に属しています。
紀元前2世紀頃、この辺りに住んでいたとされるケルト人が国家を築いたことから始まり、約500年におよぶローマ帝国による支配、および約640年間にわたり続いたハプスブルク家による統治を経て現在に至ることから、先史時代やローマ時代の遺跡、ハプスブルク家ゆかりの建造物など、歴史的な見どころを多く有することで知られています。
そのほかにも、アルプスの高峰や緑深い渓谷をはじめとする変化に富んだ地形が織りなす絶景、華やかな宮廷文化、ヨーロッパらしい建造物が立ち並ぶ素敵な街並み、美味しい郷土料理の数々など、表情豊かな魅力をいくつも兼ね備えているのが特徴です。
時差
日本との時差は8時間で、現地時間が0時のとき日本は8時です。
また、3月最終日曜の午前2時から10月最終日曜の午前3時までの期間はサマータイム(夏時間)が適用され、通常の時間より1時間前倒しとなり時差が7時間へと短縮されます。
旅行期間にサマータイムの開始または終了時期が重なる場合は、現地時間の切り替わりに注意が必要です。
人口と言語
オーストリアの総人口は約880万人(2019年時点)で、そのうち約98%がドイツ語を母国語としています。
そのほか、国土南部および東部にはオーストリア政府から認定された6つの少数民族が居住しているため、クロアチア語、ハンガリー語、チェコ語、スロバキア語、スロベニア語なども話されています。
宗教
カトリック教徒が総人口の約6割を占めるほか、プロテスタント、ギリシア正教、イスラム、およびユダヤ教など多数の宗教が信仰されています。
ベストシーズン
アルプスの谷間に美しい高山植物が咲き誇る5月、湿度が低く爽やかな気候が気持ち良い6月、年間降水量が最も少なく快適に観光を楽しめる9月などがベストシーズンです。
オーストリアの通貨および両替事情
通貨について
オーストリアの基本通貨はユーロ(EUR)で、ユーロという単位を用いて表記されるのが一般的です。2020年10月現在、1ユーロあたりの両替レートは約124.31円です。
紙幣は5ユーロ、10ユーロ、20ユーロ、50ユーロ、100ユーロ、200ユーロ、500ユーロの7種類。硬貨は1ユーロ、2ユーロ、および1セント、2セント、5セント、10セント、20セント、50セントの合計8種類が存在します。
両替について
日本円からユーロへの両替は、空港や銀行をはじめ街中の両替所、観光客向けの大型ホテル、主要な鉄道駅の構内などで行えますが、空港や鉄道駅の両替レートはあまり良くないので、なるべく銀行で両替することをオススメします。
オーストリアの気候と服装
オーストリアの地形は大きくアルプス山脈、パンノニア低地、ウィーン盆地、ボヘミア高地に分類され、地域ごとに気候の特徴が異なります。
東部は降水量が少なく夏の暑さが厳しいパンノニア低地気候、北部は降水量が多く夏がとても短いアルプス気候、その他の地域は湿度の低い大陸性気候に属しています。
北海道以北に位置しているため冬の時期はとても寒くなりますが、地中海から流れ込む暖流の影響により緯度のわりには温暖で過ごしやすい傾向にあります。
一方、夏は日差しが強く最高気温が35度以上を記録することもあるので観光に出かける際の紫外線対策はしっかりと行うようにしましょう。また、オーストリアの年間降水量は日本の平均に比べて少ないものの、6〜8月は雨に雷が伴うことが多いので高原地帯を訪れる場合は天気の急変に注意が必要です。
春(4〜6月)
春の訪れは地域によって異なりますが、4〜6月頃が目安となり日本に比べやや遅いのが特徴です。首都ウィーンやその近郊では新緑が輝き、ライラックやチューリップなど春の花が咲き誇り、柔らかな日差しに恵まれます。
この時期は、暖かく過ごしやすい陽気と冬を思わせるような寒さをあわせ持つとても気まぐれな気候なので、気温の変化に合わせて着脱しやすい重ね着スタイルがオススメです。
夏(6〜8月)
夏はアルプスの山岳地帯を中心にさまざまな高山植物が咲き乱れ、ハイキングや登山のほかにもチロル地方を訪ねてオーストリアの原風景を眺めたり、観光客向けの蒸気機関車や湖での遊覧クルーズを満喫したりなど、期間限定で楽しめるアクティビティーが満載です。
また、ザルツブルク音楽祭やブレゲンツ音楽祭、メルビッシュ湖上オペレッタ、インスブルック古楽音楽祭をはじめとする夏の芸術イベントも数多く開催されます。
平地では日中の最高気温が30度を上回る日が多く日差しも強い傾向にありますが、日本と比べ湿度が低いため梅雨のような不快な蒸し暑さを感じることはないでしょう。
日中の観光はTシャツや半ズボン、薄手のワンピースなど日本の真夏と同様の服装が適しています。一方、朝晩の冷え込みは厳しく首都ウィーンでも最低気温が10度を下回ることもあるので厚手のカーディガンやセーターを持って行くと便利でしょう。
秋(9〜11月)
9月になると一気に肌寒くなり、秋の足音が聞こえてきます。
アルプスの山岳リゾートはオフシーズンに突入するため、ロープウエーなどが運休している場合があります。そのため、この時期は山岳部の観光を避けて首都ウィーン、ザルツブルク、グラーツなどの中世都市を訪れることをオススメします。
10月以降は本格的な寒さを感じる日が続き、日中の平均気温が1桁となることも多いのでジャケットやトレンチコートに加え、ストールなどを持ち歩くと良いでしょう。
冬(12〜3月)
オーストリアの冬は寒さが非常に厳しく、標高1,800m以上の高原地域では11〜5月まで雪に覆われます。また、標高2,500m以上の高山地帯は万年雪に覆われているため、年間を通じてスキーやスノーボードなどのウィンタースポーツを楽しめます。
平均最低気温は5度を下回り、平地でも雪が積もることがあるので厚手のコートやダウンジャケットに加え、手袋やマフラーなどの防寒具、滑り止めが付いた靴などを用意しましょう。
オーストリアの治安
オーストリアはヨーロッパ諸国の中でも比較的治安が良い国とされていますが、警戒心の薄い日本人観光客は犯罪のターゲットとして狙われやすいので、貴重品を含む手荷物の管理はしっかりと行うようにしましょう。
凶悪犯罪は比較的少ないのですが、外国人観光客を狙ったスリや置き引き、ひったくりなどの軽犯罪による被害が多発しています。空港や駅の周辺、地下鉄車内、人気観光スポットやイベント会場など多くの人が集まる場所では十分に注意する必要があります。
被害に遭わないために気を付けるべきポイント
カバンはファスナー付きのものにする/貴重品は貴重品袋などに入れて服の中に隠す/レストランを訪れる場合は手荷物から目を離さない/劇場へ持ち込む手荷物は最小限にする/人通りの少ない道や日没以降の独り歩きは避ける/見知らぬ人に話しかけられても気軽に応じない
パスポート携行の義務
オーストリア国内では自身が滞在している場所から遠く離れる場合、パスポートなどの身分証を携帯する必要があります。
基本的に滞在都市の郊外やその他の都市を訪れる際に必要となるので、防犯用のパスポートケースなどに入れて肌身離さず持ち歩くのが理想です。
人気観光地
ウィーン(Vienna)
オーストリア東部の盆地に位置する同国の首都で、市内中心部を貫くドナウ川によって南北に分けられています。
ウィーンはハプスブルク家の繁栄のもと数世紀にわたって発展した歴史を誇る歴史都市であるほか、モーツァルトやベートーベンといった著名な音楽家が活躍した音楽の都としても親しまれ、本場のオペラやクラシックから、西洋美術、伝統あるカフェ文化に至るまで、豊富な見どころを有するのが特徴です。
主要な観光スポットはドナウ川の西側に位置する1区周辺に集中しているので、徒歩でも気軽に観光を楽しめます。また、ウィーン市内では路面電車をはじめ、地下鉄やバスなどの公共交通機関も運行されているので時間を節約しながら効率的に観光を楽しみたいという方は積極的に利用することをオススメします。
ザルツブルク(Salzburg)
ザルツブルクはドイツ語で「塩の城」を意味するザルツブルク州の州都で、周囲の岩塩鉱から産出される塩の取引によって紀元前から繁栄した歴史を誇ります。
ローマ帝国の支配下にあった700年頃に聖ルペルトがザンクト・ペーター教会を建造して以降、大司教座が置かれカトリック文化の中心都市として長きにわたって発展し、19世紀前半まで政治および文化的にローマ法王庁との結び付きが強かったことで知られ「北のローマ」という名でも親しまれています。
町の中心部を流れるザルツァッハ川を挟んで新市街と旧市街に分かれており、東岸に広がる旧市街がユネスコの世界文化遺産に登録されています。豊かな自然に囲まれた街にはバロック様式の大聖堂をはじめ、歴代の大司教宮殿、モーツァルトゆかりのスポットなど、見どころが盛り沢山です。
また、モーツァルトの生誕地であることから音楽の都としても親しまれ、年間を通じてさまざまな音楽祭が開催されています。郊外には、ミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』のロケ地も点在しているので、映画に登場する名シーンが撮影されたスポットをいくつか回るのも楽しいでしょう。
ザルツカンマーグート(Salzkammergut)
ザルツカンマーグートはドイツ語で「塩の宝庫」を意味する地方で、上質な岩塩の取引により古くからハプスブルク帝国の財政を支えていたことで知られています。
人々の食生活に欠かせない存在として親しまれている塩は、かつて「白い黄金」と称されるほど高値で取引されていたそうで、この地はハプスブルク家直轄の御料地として繁栄しました。
この地方はオーストリア中部のオーバーエスターライヒ州とザルツブルク州にまたがるように位置し、アルプスの峰々と70以上におよぶ美しい湖が点在する景勝地でハルシュタットおよびダッハシュタインの文化的景観とともにユネスコの世界文化遺産として登録されています。
また、映画『サウンド・オブ・ミュージック』の舞台であるシャーフベルク山の蒸気機関車やモントゼー教会なども位置することから、ザルツブルクと同様にロケ地巡りを目的に多くの観光客が訪れています。
ハルシュタット(Hallstatt)
ザルツカンマーグート地方に位置するハルシュタット湖畔の小さな町で、ザルツカンマングートおよびダッハシュタインとともにユネスコの世界文化遺産を構成しています。
湖畔に並ぶ中世以来の家並みは、まるで絵に描いたかのように美しく「世界で最も美しい湖畔」と称されています。
ハルシュタットはとても小さな町ですが歴史的な見どころもあり、近郊では中央ヨーロッパ最古の鉄器文化を生んだとされるハルシュタット文化の遺跡や世界最古の塩坑を訪れることができます。
そのほかにも壮大な自然が織りなす絶景を見渡す展望台を訪れたり、遊覧船に乗ってレイククルーズを楽しんだりなど、さまざまな見どころがあるのでぜひ足を運んでみてください。
インスブルック(Innsbruck)
オーストリア西部に位置するチロル州の州都で、標高2,000mを超えるアルプスの山々に囲まれた風光明媚な街並みが魅力です。
インスブルックはドイツ語で「イン川に架かる橋」を意味する中世都市で、東アルプスを貫流するイン川の右岸に旧市街が広がっています。
15世紀末にハプスブルク帝国の皇帝マクシミリアン1世の統治下により発展を遂げたことから、王宮や宮廷教会、アンブラス城など、パプスブルク家ゆかりの建造物が多く残されています。中心部にはゴシック様式の建物が立ち並び、その周辺にはバロック様式の街並み、そして郊外にはアルプスに抱かれた大自然が広がっており変化に富んだ景観を楽しめるのが魅力です。
また、過去に2度冬季オリンピックが開催されているほどウィンタースポーツが盛ん。合わせて楽しむのも良いでしょう。
グラーツ(Graz)
オーストリア南東部に位置するシュタイアーマルク州の州都で、同国第2の都市として親しまれています。
グラーツは14世紀にハプスブルク家の都として発展した古都で、町を南北に流れるムーア川の東岸に広がる旧市街および西岸の郊外に位置するエッゲンベルク城がユネスコの世界文化遺産に登録されています。
街中を散策していると、ルネサンス・ゴシック・バロック・現代建築などさまざまな時代の建造物に出会えるので、歩いているだけでとても楽しい気分に浸れます。
首都ウィーンからレイルジェット(railjet)を利用して片道約2時間35分でアクセス可能なので、日帰りで訪れることもできます。
定番スポット10選
シェーンブルン宮殿
神聖ローマ帝国のローマ皇帝として知られるレオポルト1世の命を受け1696年に着工されたのち、1713年に完成されたバロック様式の大宮殿でウィーンの郊外に位置しています。
この宮殿はフランスのヴェルサイユ宮殿を凌ぐものを目指して建造が開始されたそうで、設計にはオーストリアの著名なバロック建築家フィッシャー・フォン・エルラハをはじめとする複数の建築家が携わっています。
現在見られるような美しい姿に完成されたのは女帝マリア・テレジアの時代で、1713年から1918年にはハプスブルク家の夏の離宮として使用されていたといわれています。
宮殿の部屋数は合計1,441室あり、そのうち2階部分に位置する40室が一般公開されています。舞踏会や晩餐会の会場として使用された大広間をはじめ、皇帝の寝室や朝食室などの居住空間、6才のモーツァルトが御前演奏したことで有名な鏡の間など、非常に多くの見どころがあるのでなるべく時間をかけて見学を楽しむことをオススメします。
また、宮殿の目の前に広がるフランス式庭園も非常に見応えがあるので観光ついでに敷地内を散策してみてはいかがでしょうか。
シュテファン寺院
首都ウィーンのシンボル的存在として親しまれているゴシック様式の大聖堂で、旧市街の中心部に位置しています。市民からは「シュテッフル(Steffl)」の愛称で呼ばれているそうで、天を突くようにそびえる高さ137mの尖塔(せんとう)と個性的なモザイク模様が施された屋根が訪れる者の目を惹きます。
創建の歴史は12世紀半ばまでさかのぼりますが、13世紀に起きた火災により教会の建物が倒壊してしまったため、現在見られる最も古い部分でも13世紀後半に正面入口部分に築かれたロマネスク様式の門に限られているのが特徴です。
シュテファン寺院はもともとロマネスク様式の教会として建てられたそうですが、現在のような後期ゴシック様式に改築されたのは14〜16世紀頃といわれています。
聖堂内には中世後期のオーストリア人建築家アントン・ピルグラムが製作した石造りの説教壇や聖母子の木彫りの聖檀飾り、フリードリヒ3世の墓、地下にはカタコンベがあります。
また、教会の南北に位置する尖塔はそれぞれ入場可能です。シュテファン寺院を観光で訪れる際はぜひ上まで登って旧市街の絶景をお楽しみ下さい。
国立オペラ座
1861年から1869年にかけて建造された宮廷歌劇場で、パリやミラノと並ぶヨーロッパ3大オペラ劇場のひとつに数えられています。
1869年にモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」で幕開けして以降、ヨハン・ヘルベックやグスタフ・マーラーをはじめとする多数の有名作曲家が音楽監督を務めたことで知られ、音楽の都ウィーンを象徴する存在として親しまれています。
創建当時の建物は第2次世界大戦中に爆撃を受けて完全に破壊されてしまったため、訪れることは出来ません。現在見られる建物はマーシャル・プランなどの支援を得て再建されたもので、1955年にカール・ベームの指揮で初公演が行われました。
館内は昼間のガイドツアーに参加することで見学可能です。ツアーの開始時刻は不定期なので参加を希望する場合は必ず公式サイトで催行スケジュールを確認してから訪れるようにしましょう。
美術史博物館
ハプスブルク家の歴代皇帝が収集した芸術のコレクションを所蔵・展示する美術館で、世界屈指の作品規模と質の高い展示内容が評判です。特に世界最多の所蔵数を誇るブリューゲルのコレクションは有名で、代表作の「バベルの塔」や「雪中の狩人」などの作品は必見です。
建物の内部は3フロアから構成されており、1階は古代ギリシア・ローマ・エジプトの彫刻などのコレクションおよび美術工芸収集室、2階にはフェルメールやラファエロ、ルーベンス、クラーナハ、ベラスケスなどが描いた名画の数々を展示する絵画コレクション、そして3階には貨幣コレクションが位置しています。
そのほか、ミュージアムショップやカフェも併設されているので観光のついでに訪れてみてはいかがでしょうか。
王宮(ウィーン)
ハプスブルク家の歴代皇帝が13世紀後半から1918年まで約600年以上にわたって居城として利用してきた宮殿です。旧王宮(Hofburg)および新王宮(Neue Burg)から構成されており、2,500以上の部屋があるといわれています。
広大な敷地内には王宮のほかに、世界で最も美しい図書館として知られる「国立図書館プルンクザール」をはじめ、王家の婚礼が行われた宮廷付属の教会「アウグスティナー教会」、世界最大級のグラフィックアートコレクションを有する美術館「アルベルティーナ」などのさまざまな施設が併設されており、主要な見どころとして親しまれています。
王宮の入場料には日本語版オーディオガイドの使用料が含まれており「皇帝の部屋」、「シシィ博物館」、「鉄器コレクション」の3ヵ所を見学することが可能です。また、教会や礼拝堂を含むその他の施設を訪れる場合は、別途入場料が必要となるため注意が必要です。
皇帝の部屋
皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の執務室、謁見(えっけん)の間、皇妃の体操室兼化粧室と浴室、居間や寝室をはじめとする私室など、華やかで美しい装飾が施された合計24の部屋が一般公開されています。
シシィ博物館
シシィの愛称で親しまれていたとされる、ハプスブルク家の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の妃エリーザベトの、波乱に満ちた人生をフロアごとにテーマを設けて紹介している博物館です。
シシィが愛用していたドレスや小物から、暗殺に使用されたといわれるヤスリまで、彼女を身近に感じられる展示品の数々が評判です。
銀器コレクション
ハプスブルク家が代々受け継いできた膨大な食器のコレクションを所蔵しており、金器や銀器だけでなく17〜18世紀の古伊万里をはじめとする磁器も多数展示されています。
ベルヴェデーレ宮殿
オーストリアのバロック建築家ヨハン・ルーカス・フォン・ヒルデブラントの設計により1714年から1723年にかけて建造された宮殿です。
ベルヴェデーレ宮殿は、1683年にオスマン帝国により行われた第2次ウィーン包囲でハプスブルク帝国を勝利に導いた英雄プリンツ・オイゲン公の夏の離宮として使用されたほか、1955年にはオーストリアの主権回復を認めるオーストリア国家条約の調印が行われた場所としても知られる、歴史的建造物でユネスコの世界文化遺産に登録されています。
同宮殿はウィーン市街を見渡す高台に位置し、緩やかに傾斜した庭園を挟んで南側にある上宮および北側の下宮から構成されています。上宮はかつて社交・祝典用として、下宮はオイゲン公の住まいとして使用されていたそうでオーストリア風バロック建築の傑作として親しまれています。
宮殿内は美術館として公開されており、バロック美術から古典主義、ロマン主義や印象派に至るまで約400点以上に上る名作が展示されています。
おもな見どころ
グスタフ・クリムト「接吻」「フリッツァ・リードラー」「ヒマワリの咲く庭」
エゴン・シーレ「家族」「死と乙女」「母と2人の子ども」「ライナー家の少年」
フェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラー「聖体拝受日の朝」
ジャック・ルイ・ダヴィット「サン・ベルナール峠を越えるナポレオン」
ホーエンザルツブルク城塞
神聖ローマ帝国皇帝とローマ教皇の叙任権闘争のさなか、教皇側についていたザルツブルクの大司教ゲープハルトが、1077年にメンヒスブルク山の山頂に築き始めた城塞で、数世紀にわたる増改築を繰り返して、17世紀中頃に現在のような姿に完成されたといわれています。
中世の城塞建築としては中欧で最も良好な状態の1つに数えられ、「ザルツブルクの旧市街」の一部としてユネスコの世界文化遺産に登録されています。
城塞の内部は、日本語版オーディオガイドによるツアーで見学することが可能です。城塞の歴史を聞きながら塔上の見張り台や拷問部屋、「ザルツブルクの雄牛」と呼ばれる大オルガンなどの見どころを回ります。
いくつかの博物館も併設されており、中世の家具や武器などが展示されています。また、大司教の居室があった館を訪れることも出来るので、合わせて観光を楽しみましょう。
モーツァルトの生家
世界的に有名な、作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(通称:モーツァルト)が誕生したことで知られる歴史ある建物で、黄色く塗られた外壁に金色のメダイヨン飾りが付いた外観が目印です。
ザルツブルク大司教の宮廷楽団のバイオリン奏者だった父レオポルトと、その一家は、1747年から1773年までこの建物の3階に住んでいたそうで、モーツァルトは4階で誕生したといわれています。
建物の内部は、一部を除いて記念博物館として公開されています。出生の部屋をはじめ、モーツァルトが少年時代に使用していたバイオリンやピアノ、モーツァルト家の肖像画、自筆の楽譜や手紙、「魔笛」を作曲したクラビコードなどの貴重な品々が展示されています。
ミラベル宮殿と庭園
オーストリアのバロック建築家ヨハン・ベルンハルト・フィッシャー・フォン・エルラッハの設計により1606年に創建された宮殿で、ユネスコの世界文化遺産「ザルツブルクの旧市街」を構成する歴史的建造物の1つとして親しまれています。
この宮殿は、大司教ヴォルフ・ディートリヒが愛人サロメ・アルトのために建造したもので、映画『サウンド・オブ・ミュージック』で、『ドレミの歌』が歌われた幾何学模様の美しい庭園を有することで知られています。
1818年の大火により宮殿の大部分が焼失してしまったため、クラシック様式の建物に再建されており、現在は市役所や図書館として使用されています。建物の内部で見学が可能なのは、焼失を免れた「大理石の間」のみですが、モーツァルトも演奏しに訪れたとされる豪華絢爛な空間は必見です。
また、広々とした庭園も見どころでギリシア神話をモチーフにした彫刻や噴水、手入れの行き届いた色彩豊かな花々などが訪れる人々を楽しませています。
ハルシュタット塩抗
紀元前から塩坑の町として親しまれ、岩塩の交易により繁栄したことで知られるハルシュタットに位置する「世界最古の岩塩坑」です。
ラーン地区(Hallstatt Lahn)にある乗り場から、ケーブルカーを利用して山上駅に行き、そこから山道を約15分ほど歩くと塩抗の建物に到着します。
ガイド付きの見学ツアーに参加すると、内部を訪れることができます。ツアーの所要時間は約1時間で、見学者はあらかじめ用意されている作業着に着替えて、塩坑の奥深くまで入っていきます。
塩抗の内部では巨大な岩塩をはじめ、かつて使用されていた掘削道具の数々やロウ人形で再現した作業風景などが展示されています。木製の滑り台やトロッコで移動できるので、軽い冒険気分を味わいながら観光を楽しめます。
ヨーロッパならではの建築様式が素敵な歴史的建造物 9選
黄金の小屋根
インスブルックの旧市街を象徴する存在として親しまれている建築物で、インスブルック中央駅から徒歩約10分ほどの場所に位置しています。
この建物はハプスブルク家の皇帝フリードリヒ4世がチロル伯の居所として15世紀初めに建造したもので、複数の窓を配した白壁のゴシック建築が目印です。
建物の正面に位置するバルコニーは皇帝マクシミリアン1世が広場で行われるイベントを楽しむために1494〜1496年に造らせたといわれ、金箔を施した2,657枚の銅板瓦と細やかなレリーフの数々が見どころです。
内部は博物館として公開されており、黄金の小屋根や皇帝ゆかりの品々を展示しています。
宮廷教会
皇帝フェルディナンド1世の命により1553〜1563年に建造されたゴシック様式の教会です。
この教会は神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の霊廟(れいびょう)として建てられたのですが死後の遺骸(いがい)はウィーンの南方に位置するウィーナー・ノイシュタットの聖ゲオルク大聖堂に埋葬されているため、宮廷教会の中には空の石棺のみが安置されています。
石棺は鉄細工によって囲まれており、その周りには黒いブロンズ像が28体並んでいます。これらの像はハプスブルク家の歴代王に加え、姻戚関係にある人物や皇帝が敬愛したイギリスのアーサー王を象徴しているといわれています。
また、1587年に完成した銀の礼拝堂(Silberne Kapelle)には16世紀中頃に製作されたルネサンス様式のパイプオルガンがあり、世界で最も名高い5つのオルガンのひとつに数えられています。
王宮(インスブルック)
1460年頃にチロルの領主ジークムント大公により創建された宮殿で、インスブルックの中心部に位置しています。
ハプスブルク家の皇帝マクシミリアン1世が後期ゴシック様式で拡張したのち、1754〜1773年にマリア・テレジアがバロック様式に改築を行ったためウィーンのシェーンブルン宮殿を思わせる華麗な造りをしているのが特徴です。
新大聖堂
リンツの旧市街に位置する旧聖堂から約700mほど離れた場所に1924年に完成されたネオゴシック様式の大聖堂で、2万人の収容規模を誇るオーストリア最大の教会として知られています。
建設当初はウィーンのシュテファン寺院よりも高い塔の建設を予定していたそうですが、当時のオーストリア・ハンガリー帝国ではシュテファン寺院の南塔よりも高い建造物を建築することが認められていなかったため、それよりも3m短いとされる高さ134mの尖塔が築かれました。そのため、新大聖堂は同国最大ではあるものの高さは2番目という興味深い造りとなっています。
おもな見どころは内陣を彩るステンドグラスの窓で、リンツの歴史や大聖堂の建設に携わったとされる寄金協力者たちの肖像画が美しく描かれています。
旧大聖堂
旧大聖堂は、17世紀後半にイエズス会の聖イグナチウス教会としてリンツ(Linz)の旧市街に建造された教会で、リンツで最も重要なバロック教会として親しまれています。
この教会はオーストリアの作曲家であるアントン・ブルックナーが1855〜1868年までの13年間オルガン奏者を務めたとされるブルックナーゆかりの地で、1785〜1909年までリンツ主教区の大聖堂として使用されました。
建物の内部には彫刻や大理石による華麗な装飾が施されており非常に見応えがあるので、観光に訪れる際はぜひ聖堂内へ足を運んでみて下さい。
エッゲンベルク城
ハプスブルク家出身の神聖ローマ皇帝フェルディナント2世の重臣であったとされるエッゲンベルク公が「時空間」をテーマに1625〜1635年に築いた宮殿で、グラーツの旧市街とともにユネスコの世界文化遺産に登録されています。
エッゲンベルク城はイタリア・ルネサンス後期のマニエリスム様式の建物で「四季」を表す4つの塔をはじめ「12ヵ月」を表す12の門、「1年の日数」を表す365の窓など時間や暦に由来する数を用いた造りをしているのが特徴です。
3階部分にある豪華な部屋(Prunkraume)は4月から10月にかけて一般公開されており、ガイドツアーで見学することが可能です。そのほかにも、広大な敷地内には庭園やコインコレクション、アルテ・ギャラリーなどの施設も併設されているのであわせて訪れてみてはいかがでしょうか。
シュロスベルク
シュロスベルク(Schlossberg)は、グラーツの旧市街北部に位置する海抜473mの城山です。頂上付近には13世紀に築かれた高さ28m時計塔があり、街のシンボルとして親しまれています。
この時計塔は1265年に建設されたもので直径が5m以上ある文字盤を備えているほか、長針が「時間」を、短針が「分」を表すという面白い特徴を持つことで知られています。かつては城塞の一部として築かれたそうですがナポレオンの占領下で城部分のみが取り払われたといわれ、現在は時計塔と鐘楼だけが残る公園となっています。
時計塔のある公園は見晴らしが良いので、中世の建物がひしめくグラーツの街並みを一望できます。
ハイドンハウス
ハイドンハウスはオーストリア出身の作曲家フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1766〜1778年の12年間住んだとされる家で、ブルゲンラント州の州都として知られるアイゼンシュタットの中心部に位置しています。
建物の内部は博物館として一般公開されており、ハイドンゆかりの遺品や肖像画、楽譜、当時のピアノなどが展示されています。開館期間が3月下旬から11月上旬までに限られているので、内部見学がお目当ての場合は注意が必要です。
エスターハーズィー城
エスターハーズィー城は13世紀後半にアイゼンシュタット中心部に建造された宮殿で、オーストリアで最も美しいバロック様式の宮殿の1つに数えられています。
この宮殿は1622年にハンガリー最大の名門貴族エスターハーズィー家の手に渡り、17世紀後半にパウロ1世の下で現在見られるような建築様式に改築されたといわれています。また、作曲家フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1761年から40年近く仕えたことでも知られハイドンが使用していたとされる楽器の間をはじめ、当時の図書室や豪華な食器類のテーブルセットなどが展示されています。
世界遺産に登録されている景勝地 2選
ノイジートラー湖
中央ヨーロッパで唯一のステップ湖で、隣国ハンガリーとの国境にまたがるように位置しています。湖の表面積は琵琶湖の約半分ほどの大きさにあたる315平方kmで約75%がオーストリア領、残りの約25%がハンガリー領に属しています。
水深は深いところでも1.5〜2mほどしかなく、これまでに何度も干上がってしまったことがある不思議な湖です。また、コウノトリやシラサギをはじめとする野鳥が多く飛来することでも知られ、その美しさからユネスコの世界遺産に登録されています。
ヴァッハウ渓谷
ヴァッハウ渓谷はオーストリア北部のドナウ川下流地域に広がる景勝地で、メルク(Melk)からクレムス(Krems an der Donau)までの約35kmにおよぶ渓谷一帯が「ヴァッハウ渓谷の文化的景観」としてユネスコの世界遺産に登録されています。
渓谷の両岸には緑豊かな森やブドウ畑が広がるほか、中世の面影が残る美しい町並みが点在し風光明媚な景観をつくり出しています。
メルクとクレムスの間を運航している遊覧船を利用すれば両手に広がる絶景を眺めながらリバークルーズを楽しめます。河岸にはメルク修道院やアックシュタイン城など歴史的な見どころがいくつもあるので、スケジュールに余裕のある方はぜひ1泊以上滞在して町巡りを楽んでみて下さい。
アルプスのパノラマ絶景を望むおすすめスポット 3選
シャーフベルク
シャーフベルク(Schafberg)は、ザルツカンマーグート地方に位置する標高1,783mの山です。
山頂にはザルツカンマングート随一の大パノラマを見渡す展望台があり、アルプスの山々と青く輝く3つの湖が織りなす絶景を堪能できます。
展望台まではザンクト・ヴォルフガング(St.Wolfgang)から運行されている登山鉄道を利用してアクセスするのが一般的で、5月下旬から10月の中旬頃を中心に多くの観光客で賑わいます。
クリッペンシュタイン
クリッペンシュタイン(Krippenstein)は、ハルシュタット湖の南端に位置するオーバートラウン村(Obertraun)近郊にそびえる標高2,108mの山で、山頂の展望台から望むダッハシュタイン山塊の絶景が評判です。
ダッハシュタイン山塊はオーバーエスターライヒ州とシュタイヤマルク州の境界に広がる東アルプスの一部をなすカルスト地形で、ハルシュタットおよびザルツカンマーグートの文化的景観とともにユネスコの世界文化遺産に登録されています。
山頂までは登山のほか、オーバートラウン村から運行されているロープウエー「ダッハシュタイン・クリッペンシュタイン・ザイルバーン(Dachstein Krippenstein Seilbahn)」を利用してアクセスできます。
ロープウエーの運行期間は例年5月上旬から10月下旬頃までに限られていますが、周辺の町を訪れる際はアルプスの絶景を楽しみに展望台まで足を運んでみてはいかがでしょうか。
フランツ・ヨーゼフス・ヘーエ
フランツ・ヨーゼフス・ヘーエ(Franz Josefs Hohe)はツェル・アム・ゼー郊外に位置するオーストリアの最高峰グロースグロックナーを望む標高2,369mの展望台です。展望台の名称はドイツ語で「フランツ・ヨーゼフスの高所」を意味し、かつてフランツ・ヨーゼフス皇帝がエリーザベトと結婚した年にこの地を訪ねたことに由来するといわれています。
展望台の目の前にそびえる標高3,797mのグロースグロックナーとその麓(ふもと)に広がるパステルツェ氷河の眺めは圧巻の迫力を誇ります。ザルツブルクから日帰りで訪れることも可能なので現地での滞在時間に余裕のある場合はぜひ絶景を眺めに足を運んでみて下さい。
オーストリアの人気温泉地 3選
バート・ヴァルタースドルフ
バート・ヴァルタースドルフ(Bad Waltersdorf)は、天然温泉が数多く点在するシュタイヤマルク州東部に位置する温泉地です。この町の温泉水はミネラルを豊富に含有することで知られ、身体の免疫力や解毒作用を強化する働きがあることから保養地としてとても人気があります。
町中には温泉プールやスパなどのリラクゼーション施設を併設したホテルがいくつかあるので疲れたカラダを癒やしに訪れるのに最適です。
なかでも、中心部から西に約1.5kmほど離れた場所にある4つ星ホテルQuellenhotel Heiltherme Bad Waltersdorf(クヴェーレンホテル アンド スパ バート・ヴァルタースドルフ)の公共入浴施設「Heiltherme Spa Centre(ハイテルメ・スパセンター)」は7つの温泉プールをはじめ、9種類のサウナ、レストランやスパなどの見どころが充実しているので1日中ゆっくりと過ごすのにオススメです。
バート・クラインキルヒハイム
バート・クラインキルヒハイム(Bad Kleinkirchheim)は約1,000年以上の歴史を誇る伝統的な保養地でケルンテン州の中央部に位置しています。ノックベルク山脈の麓にあることから夏はハイキングやゴルフ、冬はスキーをはじめとするウィンタースポーツを楽しみに訪れる旅行客で賑わいます。
この町に湧き出ている温泉はリウマチや関節痛・偏頭痛などに効果があるといわれ、古くから人々に愛され続けています。源泉の温度は約36度ですが施設の温泉プールは約32度程度なので、のぼせることなくゆっくりと入浴を楽しめます。
バーデン
バーデン(Baden bei Wien)はウィーンから南へ約26km離れた場所に位置する小さな町で、古代ローマ時代より保養地として親しまれています。ハーデン(Baden)はドイツ語で「入浴する(場)」を意味するそうで、オーストリアのほかスイスやドイツにも同じ意味に由来する地名が存在します。
この地はウィーンの上流階級や王侯貴族をはじめ、多くの芸術家たちに愛された高級温泉保養地として有名でモーツァルトやヨハン・シュトラウス、ベートーベンなどの歴史的な作曲家も訪れたといわれています。
町には36〜38度あまりの硫黄泉が湧き出す源泉が14ヵ所あり、温泉施設を有するホテルや温泉センターなどで入浴することが可能です。リウマチや神経痛・皮膚病などに効果があるそうなので、ウィーンを旅行するついでに日帰り入浴を楽しんでみてはいかがでしょうか。
ウィーンで美味しいオーストリア料理が食べられるお店 3選
フィグルミュラー(Figlmuller)
フィグルミュラーは1905年創業のオーストリア料理店です。
このお店の看板料理は豚肉を薄く叩いて揚げた特製フィグルミュラーシュニッツェル(Figlmueller Schnitzel)で、他店のシュニッツェル(カツレツ)に比べお肉が柔らかく衣がパリッとしているのが特徴です。お皿からはみ出すほど大きなサイズなので、女性であれば2名以上で1皿をシェアするのが良いと思います。
また、食べきれない場合でもテイクアウトできるのでぜひ地元で人気のシュニッツェルを食べに訪れてみて下さい。
ツム・ヴァイセン・ラオホファングケーラー(Zum Weissen Rauchfangkehrer)
ツム・ヴァイセン・ラオホファングケーラーはモダンなウィーン料理を提供している人気レストランです。レディ・ガガも食べたといわれる仔牛肉のヴィーナーシュニッツェルをはじめ、ウィーン近郊の農家から直接仕入れる新鮮な食材を使用したさまざまな郷土料理がお手頃な価格で楽しめます。
品数は少ないですがヴィーガン料理もいくつか提供しているので食生活にこだわりがある方と訪れるのも安心です。シュテファン寺院から徒歩5分圏内に位置しているので、観光の合間にランチを食べに訪れてみてはいかがでしょうか。
グリーヒェンバイスル(Griechenbeisl)
グリーヒェンバイスルは1447年創業の老舗オーストリア料理店で、「ウィーン最古のレストラン」として親しまれています。このお店はモーツァルトをはじめ、ベートーベン・シューベルト・ブラームス・ワーグナーなど世界的に有名な作曲家も訪れたことで知られる名店で、壁には著名人のサインが多く残されています。
深夜まで営業しているので、現地の到着が夜でも食事を楽しめます。また、英語やドイツ語だけでなく日本語のメニューも用意されているので安心して訪れることが可能です。
失敗なしのオーストリア定番お土産
ザッハートルテ
ザッハートルテはオーストリアだけでなく日本でも高い知名度と人気を誇り、バレンタインシーズンになるとスターバックスコーヒーなどでも必ず見かける人気のチョコレートケーキです。
17世紀後半よりカフェ文化が花開き、現在でも町中に多くのカフェハウスが立ち並ぶウィーンではさまざまな種類のケーキが食べられていますが「ザッハートルテ(Sachertorte)」はそのなかで最も有名なチョコレートケーキであるといわれています。
チョコレート入りのスポンジケーキに挟まれたあんずジャムが全体の甘さを引き締めているので想像以上に食べやすく、深煎りのコーヒーとの相性が抜群です。また、日持ちもするので帰国日またはその前日に購入すれば日本へも安心して持ち帰ることが可能です。
モーツァルトクーゲルン
モーツァルトクーゲルンは「オーストリア土産の定番」として親しまれるザルツブルク発祥のチョコレート菓子です。
このお菓子はザルツブルクの菓子職人パウル・フュルストによって1890年に創作されたもので、ピスタチオ味のマルチパンやヌガークリームから作られるペースト生地をチョコレートでコーティングした球状の見た目が特徴です。
パリで1905年に開催された洋菓子展では金賞を受賞したそうで、現在に至るまで変わらず愛され続けています。現在はフュルストのほか、ミラベルやレーバー社など複数の企業によって生産されていますがミラベル社製のものが最もシェアが高いとされています。
空港の免税店や土産店だけでなく、スーパーマーケットでも気軽に購入できます。箱入りや袋入りなどパッケージのタイプも異なるので実際に手に取って比べてみることをオススメします。
カボチャオイル
熟したカボチャの種子から繊維質を取り除いたものを乾燥・圧縮して抽出するヘルシーな油で、オーストリアの名産品として親しまれています。カボチャオイル(別名:パンプキンシードオイル)はビタミンEや各種ミネラル・必須脂肪酸などの栄養素を豊富に含んだ食材でナッツのような香ばしい香りとなめらかな味わいが特徴です。
100度以下の調理に向いているそうで炒め物を作る時に使用したり、サラダやアイスクリームにかけると食材の美味しさが引き立つといわれています。近年では温かいスープや甘いカクテルを作るのにも使用されているそうで、バラエティー豊かな楽しみ方ができます。
アウガルテン
アウガルテン(Augarten)は1718年創業のオーストリアを代表する磁器工房です。この窯は1744年に女帝マリア・テレジアの命で皇室直属の磁器窯となったことからハプスブルク家の盾型紋章を商標として使用することが認められており、優美で洗練された芸術性の高い作品に皇室ならではの品格を添えています。
定番の「マリアテレジア」をはじめ、ピンク色のバラが印象的な「ウインナーローズ」や小ぶりな花柄が素敵な「フラグランス」などさまざまなシリーズがあるので、好みのデザインを探しにお店を訪れてみてはいかがでしょうか。また、ウィーンに位置するフラッグショップには日本人スタッフも勤務しているので安心して買い物を楽しめます。
オーストリアへのアクセス・所要時間
日本からオーストリアへは、直行便または乗り継ぎ便を利用してアクセスするのが一般的です。
日本から直行便を利用して行くことが出来る都市はウィーンのみで、羽田空港および成田空港からの最短所要時間は11時間40分、第3国を経由する乗り継ぎ便を利用する場合は14時間10分前後です。
オーストリア観光の移動手段
鉄道
オーストリアは鉄道がとても発達した国で、主要幹線やローカル線、私鉄、登山鉄道などの路線を合わせるとほぼすべての主要都市をカバーしています。
これらの大半はオーストリア連邦鉄道(通称:エーベーベーOBB)と呼ばれる国鉄によって運行されているほか、一部の路線ではウエストバーン(WESTbahn)やレギオジェット(REGIOJET)などの私鉄も運行しています。
最新の運行状況を含めた時刻表は国鉄のホームページまたは公式のスマートフォンアプリ「OBB」で確認できます。また、チケットの予約・購入もオンライン上で簡単に行うことが可能なので、駅の窓口で購入するのが不安な方や現地での無駄な時間を節約して効率よく行動したいという方にオススメです。
列車の種類は非常に多く、運行区間・列車編成・列車設備などがそれぞれ異なります。また、利用する路線によって鉄道パスの適用範囲も異なるため、詳しい情報は必ず事前に鉄道会社の公式ホームページを確認するようにしましょう。
【オーストリア国内で運行されている主な列車の種類】
長距離特急列車「インターシティ(IC)」
特急列車「ウエストバーン(WB)」、「レイルジェット(rj)」
中距離快速列車「レギオナルエクスプレス(REX)」
高速列車「インターシティーエクスプレス(ICE)」
普通列車「レギオナルツーク(R)」
都市近郊列車「Sバーン」
【絶景が楽しめるおすすめのパノラマ鉄道路線】
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シュネーベルク・アプト式鉄道
首都ウィーンから日帰りで行ける人気高原リゾート「シュネーベルク」を訪れる登山鉄道(プフベルク・アム・シュネーベルク〜ホホシュネーベルク間) -
ツィラータール鉄道
チロル州のツィラー川沿いを蒸気機関車が全長32kmにわたって走る路線(イェンバハ〜マイヤーホーフェン間) -
シャーフベルク鉄道
映画『サウンド・オブ・ミュージック』にも登場した登山鉄道(ザンクト・ヴォルフガング〜シャーフベルク間) -
ピンツガウ鉄道
中央ヨーロッパ最大として知られるホーエ・タウエルン国立公園を走る鉄道路線(ツェル・アム・ゼー~クリムル間)
バス
鉄道の通っていない地域や景勝地を訪れるにはバスを利用するのが便利です。
国内で最も多くの路線を展開しているのは隣国スイスでもお馴染みのポストバス(Postbus)で、旅客の運送および郵便物の運搬という2つの役割を担っています。
切符はバスの運転手から直接購入するのが一般的ですが、バスターミナルがある場所では販売窓口で購入することも可能です。この場合、バス乗車時に切符を青い箱状の打刻機に挿入して日付と時刻を打刻する必要があるので、忘れずに行うようにしましょう。
レンタカー
ハーツ(Hertz)やエイビス(Avis)など、世界的な知名度とネットワークを誇るレンタカー会社の営業所が各地に点在しています。
右側通行に慣れさえすれば快適にドライブを楽しめる国なので、スケジュールに左右されることなく自由に旅行したい人にオススメです。
レンタカーの予約は日本から電話やインターネットを通じて行うことが可能です。詳しい情報は各社の公式ホームページをご確認下さい。
オーストリア観光でお得なフリーパス
ウィーン・シティ・カード
Vienna City Card(ウィーン・シティ・カード)はオーストリアの首都ウィーンで観光客向けに発行されているお得な観光パスです。
パスの種類は有効期間の長さに応じて3つに分けられており、24時間・48時間・72時間から使用日数を選ぶことが可能です。このパスを使用するとウィーン市内の地下鉄・バス・市電の利用が無料になるほか、指定の美術館や観光スポットに割引料金または無料で入場できます。
また、24時間観光バスや空港トランスファー、またはその両方の利用が含まれるパスも用意されています。現地到着日をパスの使用開始日とする場合はシティ・エアポート・トレイン、エアポートバス、またはレイルジェット特急を無料で利用できるので空港と市内の往復に必要な費用が最大4ユーロ(約490円)節約できます。
そのほかにも、カフェやレストラン、ショッピング施設などの割引や特典が210点以上含まれているので、使えば使うほどお得に感じるでしょう。
ザルツブルク・カード
Salzburg Card(ザルツブルク・カード)はオーストリア中部の人気観光都市として知られるザルツブルクを訪れる観光客向けに発行されている観光パスです。
ウィーン・シティ・カードと同様に24時間パス・48時間パス・72時間パスの3種類があり、現地での滞在期間に応じて使用日数を選べます。
パスの有効期間中はザルツブルク市内の公共交通機関が乗り放題となるほか、すべての観光スポットへの入場および指定のケーブルカーや観光船の利用が無料になります。
そのほかにも嬉しい特典が盛り沢山なので、ザルツブルクに1泊以上滞在する場合は購入を検討してみてはいかがでしょうか。
オーストリアの年間イベント情報
4月
復活祭
復活祭(通称:イースター)はイエス・キリストの復活を祝うキリスト教最古の祝日で、教会暦の中で最も重要な祝日の1つとして数えられています。
オーストリアではゲルマン神話に登場する春の女神「エオストレ(Eostre)」に由来する、オースタン(Ostern)という名で親しまれており、毎年春分の日の後に訪れる最初の満月の次の日曜日に祝われています。
キリスト教では復活祭前の40日間を四旬節(しじゅんせつ)と呼び、肉や卵、乳製品をはじめとする動物性食品の摂取を制限するのが習わしで、復活祭当日に解禁となります。
そのため、復活祭の期間中は定番の羊料理やイースターエッグだけでなく、卵料理やバターをたっぷりと使用したケーキなどのさまざまなご馳走が食卓を彩ります。
主要な都市では復活祭の2週間ほど前からオースタン・マルクト(Osternmarkt)というイースターマーケットが開催され、地元の人々に春の訪れを知らせます。首都ウィーンではフライウング広場、アム・ホーフ広場、シェーンブルン宮殿の敷地内などが会場となり、多数の店が軒を連ねるので、観光のついでに足を運んでみてはいかがでしょうか。
また、現地では復活祭前日から復活祭翌日の月曜日までの3日間が連休となるため、行楽地を中心に多くの人で賑わいます。この時期にオーストリア旅行を計画している場合は、ホテルや公共交通機関の予約をなるべく早めに済ませておくことをオススメします。
5月
メーデー
メーデーは、毎年5月1日にオーストリアを含む世界80ヵ国以上で祝われている国際的な労働者の祭典です。
現地では祝日として指定されており、一部の地域では交通規制が行われる場合もあるので、市街地を観光する際は事前にホテルやツアー会社に詳細情報を問い合わせておくと、よりスムーズに旅行を楽しめるでしょう。
キリスト昇天祭
キリスト昇天祭は、死後の復活を遂げたイエス・キリストが昇天した日を記念する祝日です。毎年、復活祭(イースター)から40日目に祝われているため、日付が異なります。
キリスト教の典礼暦の中で最も大きな祭りの1つとして親しまれ、カトリックや正教会などを含む広範で祝われています。
聖霊降臨祭
聖霊降臨祭は「イエス・キリストが復活および昇天した後に集まって祈りを捧げていた120人の信者の上に、神からの聖霊が降った」という新約聖書のエピソードに由来するキリスト教の祝日です。日付は復活祭の49日後とされていることから毎年異なり、5月または6月上旬に祝われるのが一般的です。
復活祭およびクリスマスと並ぶキリスト教の3大祝祭日に数えられ、毎年ザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭が開催されることでも知られています。
6月
聖体節
イエス・キリストの聖体の秘跡を称えるとともに聖体を崇める祝日で、聖霊降臨祭から12日目の木曜日に祝われています。
教会でミサを行った後に司祭や助祭が持つ聖体顕示台と共に祈りを捧げながら街を練り歩くのが慣習で、その歴史は16〜17世紀までさかのぼるといわれています。
当日は国内各地でさまざまな行事が開催されますが、なかでもオーバーエステライヒ州のハルシュタットやトラウンキルヒェンで行われる聖体行列は華やかで見応えがあると評判です。
カトリック教会における大祭の1つに数えられているとても華やかな祭りなので、この時期にオーストリアを訪れる場合はぜひ現地の方々に混ざって聖体節を祝福し、素敵なヨーロッパ気分を満喫してみてはいかがでしょうか。
7月
ザルツブルク音楽祭
正式名称を「ザルツブルク祝祭上演」とする、オーストリアの夏を代表する音楽祭です。
オーストリア北西部に位置する都市ザルツブルクで毎年7月下旬から8月下旬にかけて開催され、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団などの著名な楽団をはじめ、指揮者、ソリストなど、世界中のトップアーティストが集い最高水準のオペラや演劇などを披露します。
世界最大の音楽祭の1つに数えられるとても有名なイベントなので、この時期にオーストリアを旅行される方はぜひザルツブルクを訪れて本場の芸術ならではの魅了を堪能してみてはいかがでしょうか。
8月
マリア被昇天祭
聖母マリアがその人生の終わりに霊魂と肉体を伴って天国へと召し上げられたことを記念する祝日で、毎年8月15日に祝われています。
宗派にかかわらずキリスト教を信仰する人々のあいだでクリスマスやキリスト昇天祭と同様に大切にされている重要な記念日です。
10月
建国記念日
第2次大戦後にあたる1955年5月に連合国とのあいだで締結されたオーストリア国家条約により主権を取り戻し、同年10月26日に永世中立を宣言したことを記念する日です。
この日は各地でさまざまなイベントが開催されるほか、首都ウィーンでは建国記念日を祝う大規模なパレード、音楽隊による演奏などが行われ町中がお祝いムードに包まれます。
また、市内に位置する複数の美術館・博物館、および国会議事堂や首相府・外務省・教育省・最高裁判所などの普段は見学することが出来ない政府機関の建物も無料で一般公開されるため必見です。
11月
諸聖人の日
諸聖人の日(別名:万聖節)は、キリスト教におけるすべての聖人と殉教者を記念する祝日です。先祖の墓参りをする習慣があり、日本でいうお盆やお彼岸のような存在として親しまれています。
12月
聖母無垢受胎の日
聖母無垢受胎の日は「聖母マリアが穢れ(けがれ)なくこの世に宿された」というカトリックの教理『聖母の無原罪の御宿り』に基づく記念日で、オーストリアの祝日に指定されています。
クリスマス
「冬の一大イベント」といえばクリスマスを思い浮かべる人が多いと思います。
クリスマスはイエス・キリストの後誕を記念する日として世界中で広く親しまれているキリスト教の伝統行事で毎年12月25日に祝われています。
オーストリアを含む欧米諸国では祝日に指定されており、家族や親戚などの親しい人と一緒にゆっくりと過ごすのが一般的です。
クリスマスシーズンは、きらびやかなイルミネーションやクリスマスツリーによる素敵な装飾だけでなく、国内各地で開催されるクリスマスマーケットや伝統的な料理など、大人から子どもまで楽しめる見どころが盛り沢山です。
クリスマスマーケットは11月下旬からクリスマス・イヴにかけて国内各地で開催されるので、クリスマス前の旅行でも訪れることが出来ます。各都市ごとに名物や特徴が異なるので、いくつか巡ってみるのもオススメです。
聖シュテファンの日
キリスト教における最初の殉教者となった聖シュテファンを記念する祝日で、聖名祝日の1つとして親しまれています。
オーストリアだけでなく、アイルランドやイタリアを含む多くのヨーロッパ諸国で祝われており、フィンランドやギリシア、イギリスなどの国々では「ボクシングデー(Boxing Day)」として祝日に指定されています。