ダルバートとは
一言で言えば、ネパール式の定食。国民食的存在で、マストアイテムはダール(豆のスープ)とバート(ご飯)。それに加え、カレーやアチャール(スパイスを使った漬物)、タルカリ(野菜のおかず)、サラダなどが、お店によってさまざまな組み合わせでワンプレートに盛り付けられます。
食べ方は自由。各種おかずとご飯を混ぜ合わせて食べるのが本場スタイルだけど、日本の食事のようにおかず単体とご飯を食べてもOK。名前がシンプルなら、スパイス使いも味付けもシンプル。だけど、自由な食べ方も相まって強調されるその滋味深さで、ネパール料理の底力を確実に食べた人の胃袋に叩き込んでくれます。
今回は東京でダルバートを食べられるお店をご紹介します。
OLD NEPAL
「ネパール料理は世界に通用するポテンシャルがあるんです」と、オーナーシェフの本田さん。大阪「ダルバート食堂」に続き、ネパールの食文化を愛する彼が今年7月にオープンさせたレストランスタイルの「OLD NEPAL TOKYO」は、昼はダルバート、夜はコース料理が提供されます。
今回のランチはもちろんダルバート。焼く、茹でる、炒めるなど基本を怠ることなく手間をかけた調理で、プレート上の料理はダールからチキンカレー、アチャール、サラダまですべてが上品で奥深い味わいなのです。
そこにプラスしたいのがお店おすすめのナチュラルワイン。相性の良さが秀逸! これはフレンチ……?イタリアン……?「ダルバート×ワイン」がこんなに絶妙な関係だったなんて! 間違いなくネパール料理の見え方が刷新されます。
ダルバートだけでもこの衝撃なら、ディナーのコースはどれほどすごいことか。夜の再訪でさらなるネパールの魅力を感じたい!
今回いただいた料理
チキンカレーとグンドゥルックカレーのダルバート:1,650円(税込)
グラスワイン:770円(税込)~
SHOP INFO
店名:OLD NEPAL TOKYO
住所:東京都世田谷区豪徳寺1-42-11
電話:03-6413-6618
営業時間:月曜11:30〜14:30(LO)、水~金11:30〜14:30(LO)18:00〜21:00(LO)
定休日:火曜
ADI
こちらも今年8月オープンのネパール料理最前線。麻布十番での間借り営業を経てオープンした、期待の新店です。
ネパール人のオーナーシェフ・アディカリさんが「ネパールの自然を感じてほしい」との思いでつくった店内は、ゆったりとした時間の流れ。ここは中目黒ではなく、たしかにネパールの空気で満たされています。
益子焼きの器に盛り付けられたダルバートは、素材をいかした母親直伝のレシピを踏襲しながらも、シェフの新鮮な解釈をプラスしたモダンスタイル。
特にダールが印象的で、素材はネパール産のインゲン豆(シミダル)。とろりとした舌触りで甘みが口に広がり、一口目からレベルの高さを感じさせてくれ、チキンカレーや副菜との掛け合わせで自分だけのダルバートが完成していく、食べる喜びを体感させてくれるのです。
ちなみに店名の「ADI」はサンスクリット語で「はじまり」を意味する言葉。始まったばかりのお店が、今後どのように進化をしていくのかが楽しみでなりません!
今回いただいた料理
平日ダルバートランチプレート:1,200円(税込)
週末ダルバートコース:2,500円(税込)
※写真は週末ダルバートプレート。さらに1種のカレーが追加されます
SHOP INFO
店名:ADI
住所:東京都目黒区上目黒2-46-7
電話:050-3184-4491
営業時間:平日ランチ(火〜木)11:30〜14:30、週末ランチ(土、日):11:00〜15:30、ディナー1部18:00〜20:00、2部20:30〜22:30、チャイスタンド9:00〜18:00
定休日:月曜、最終火曜
ネパリコ
渋谷・桜丘の奥にオープンした「ネパリコ」は、東京のネパール料理店のパイオニア。ネパール料理店がまだ都内にほとんどなかった10年前、「ネパール料理を知ってもらいたい!」とオーナーのパダムさんが開いたお店です。
人通りと静けさが交差するここには、近隣のIT企業勤めのサラリーマンもいれば学生も女性客もいますが、幅広い層に長年愛されるポイントのひとつはそのヘルシーさ。
油の量を極力減らしながらも、シンプルなスパイス使いで素材を活かすことでアクセントはバッチリ。バランスの妙を表現したダルバートは、日本人の食の原体験を想起させながらあっという間に完食まで導いてくれます。あぁ、至福……。
丁寧なダルバートを10年間提供し続けてくれたおかげで、いまの日本のネパール食文化の
盛り上がりがあると知ると、そのワンプレートが持つ価値、味わいはより深くなるはず。
ダルバートだけでも十分満足ですが、ラムやグンドゥルック(発酵青菜)のアチャールもぜひアドオンしてみてほしい。
今回いただいた料理
ダルバート W(チキン+ラム):1,430円(税込)
サグ―:250円(税込)
グンドゥルック:198円(税込)
SHOP INFO
店名:ネパリコ 渋谷店
住所:東京都渋谷区桜丘町30-18 メイサ南平台 1F
電話:03-6416-1827
営業時間:11:30〜15:00(LO14:30)、18:00〜23:00(LO22:30)
定休日:日曜、祝日
※現在コロナの影響によりディナーは18:00〜22:00(LO21:30)、土・日・祝は休業中。
営業時間、休業日に変更がある場合はNEPALICOのTwitterにてアナウンス。
ムスタング タカリ
最後の「ムスタング タカリ」ではぜひその溢れんばかりの“現地感”を感じてほしい。新大久保という立地や店内のカラフルなライト、装飾、スタッフはもちろんネパール人で、客層も6割はネパール人……。このご時世、少しの勇気でこのディープさを味わえるのは貴重な体験。
肝心の食事。驚くべきは価格。ランチタイムのカナ(カナはご飯がついた食事のことで、ダルバートを指すことがほとんど)セットはなんと600円!近隣のネパール人御用達ということもあるのか、全体的にピリリと辛みが強くパンチのある味付け。そうなるとビールが飲みたい。ビールがあればモモ(ネパールの蒸し餃子)も食べたい。
ネパールらしさに囲まれることで、旅の欲求も満たしてくれる。それがこの値段でできるなんて、コスパがよすぎはしませんか?
今回いただいた料理
カジャセット:600円(税込)
モモ:500円(税込)
ランチビール:300円(税込)
SHOP INFO
店名:ムスタング タカリ
住所:東京都新宿区大久保1-9-16 2F
電話:03-6233-9277
営業時間:11:00〜翌4:00
定休日:なし
取材を終えて
ダルバートと言っても三者三様、それぞれに違ったネパール料理の魅力をのぞかせてくれるダルバートに感嘆しながら取材を行ったのは、2020年の夏の終わりごろ。
各店の盛り上がりやSNSでの投稿を眺めていると、この間にも着実にファンが増ていることを実感しまています。
カレーファンだけの嗜好だったダルバートは、そのすそ野を広げて初めて口にする人も受け入れながら、実はディープなネパール料理のおいしさにも気づかせてくれます。これからさらに盛り上がることで楽しみ方も広がるであろうダルバートとネパール料理。これを機にぜひ堪能してみてください。