源氏物語宇治十帖「浮舟」
京都府宇治市三室戸寺境内
川岸に、一艘の小さな柴舟が舫ってある。その小舟に匂宮と姫はもろともに乗り、向こう岸へ棹さして渡っていく。船頭が、 「これが、橘の小島でございます」と言う。
そこに常磐木が木蔭を繁らせている。匂宮は、姫にこう話しかけた。 「あれをご覧なさい。なんだか頼りないような木だが、それでも千年でも色変わらぬかと見ゆる、あの緑の色深さを……」
姫は、こう歌を返す。
橘の小島の色はかはらじを
この浮舟ぞゆくへ知られぬ
源氏物語に出てくる「橘の小島」は、宇治橋よりも下流にあった島であったが今は存在していない。現在の宇治橋より上流にある橘島は後に作られたもの。