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【アジア初の回顧展】アーティスト『ゴードン・マッタ゠クラーク展』が東京国立近代美術館で開催

2018年6月19日(火) 〜 2018年9月17日(月)

ポイント!
  • 1970年代にニューヨーク中心に活躍したアーティストの回顧展
  • 没後40年の今日でも人々の注目を集め世界各地で個展が開催
  • 彫刻・映像・写真など斬新なアイデアの数々を約200点展示

ゴードン・マッタ゠クラーク Photo: Cosmos Andrew Sarchiapone ©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
ゴードン・マッタ゠クラーク Photo: Cosmos Andrew Sarchiapone ©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.

「ゴードン・マッタ゠クラーク」アジア初の回顧展

1970年代にニューヨークを中心に活躍し、35歳で夭折したアーティスト、ゴードン・マッタ゠クラーク(1943-78)。アート、建築、ストリートカルチャー、食など多くの分野でフォロワーを生み続ける先駆者のアジア初回顧展が開催される。取り壊し前の建物を切断し、見慣れた日常をまったく新たな空間・時間へと変容させる「ビルディング・カット」をはじめ、軽やかでクール、そしてポエティックな彼の活動は、没後40年となる今日もなお、世界中の注目を集めている。作品の多くが個人蔵や欧米の著名美術館(メトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館、ポンピドゥー・センターほか)所蔵のため、これまでアジアではまとまった形で紹介されるる機会が無かったマッタ゠クラークの活動だが、世界的には没後40年を経た今日もなお、絶大な人気を集めている。2017年にはポルトガル、ドイツ、アメリカで個展が開催され、2018年には本展のほかフランスで、2019年にはエストニアで個展が予定されている。

出品点数は彫刻・映像・写真・ドローイング・関連資料など約200点展示

活動期間約10年、わずか35歳で夭折したマッタ゠クラークの、アート、建築、ストリートカルチャーのみならず、アーティストによる食堂「フード」の経営など多面的な活動をフルスケールで紹介。

マッタ゠クラークの代表作が初来日

建物の一部を切り取る「ビルディング・カット」シリーズの中で最大規模の立体作品《スプリッティング:四つの角》(サンフランシスコ近代美術館蔵)が初来日。これまでほとんどアメリカ国内から出ることの無かった貴重な作品を観ることができる。

詩的なアイデアの数々

マッタ゠クラークが生きたのは、世界経済が爆発的成長を始める1970年代、そしてニューヨークという資本主義の実験場だった。そこで行われた彼の活動の核心とは、豊かなコミュニティーの創出にアートが寄与する方法の模索にあった。今日、世界に先立って社会の収縮を迎えつつあるここ東京において、彼の軽やかでクール、そして詩的なアイデアの数々は、豊かに生きるためにいま何ができるかを、私たち一人ひとりが考えるためのさまざまなヒントを示してくれるだろう。

展覧会の構成

都市を舞台に活動したマッタ゠クラークにとって重要だった5つの「場所」にフォーカスし、作品を紹介する。また1970年代ニューヨークの文化的、社会的背景を示す資料や、私たちの住む現在の東京に関わる資料などを組み込むことで、変転する現代の都市における、マッタ゠クラークの実践の今日的意味を浮かび上がらせる。

《グラフィティ:ソウル・パワー》1973年 ゴードン・マッタ゠クラーク財団&デイヴィッド・ツヴィルナー(ニューヨーク)蔵 ©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
《グラフィティ:ソウル・パワー》1973年 ゴードン・マッタ゠クラーク財団&デイヴィッド・ツヴィルナー(ニューヨーク)蔵 ©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.

1.住まい |流転する空間と記憶

マッタ゠クラークにとって重要だったのは、建築のスタイルではなく、人が「住まう」という経験だった。彼は、再開発のなかで建物が取り壊されていくプロセスに介入し、家屋の床や壁を切り取り、穴を穿つことで、捨てられた空間に新たな光を当て、またそこに住んでいた人々の歴史や記憶をも浮かび上がらせた。

2.ストリート |エネルギーの循環と変容

マッタ゠クラークは、人や物が行き交うダイナミックな現場、ストリートをしばしば活動の舞台とした。機能的な都市生活に潜む隙間(用途のない小さな土地)や余剰(街にあふれるゴミ、そこかしこの壁に書きつけられたグラフィティ)に注目し、都市のエネルギーの循環や変容を可視化するようなプロジェクトを展開する。

3.港 |水と陸の際

水と陸の境界に位置する港は、古くから都市が発生する起点となり、人や物の交流によって社会を変化させる力をもつ場所だった。マッタ゠クラークは、ニューヨークのハドソン川沿いに並ぶ埠頭でいくつものプロジェクトを行った。水運と鉄道の時代が終わり、すでに荒廃した埠頭で行われた彼のビルディング・カット(建物切断)やパフォーマンスは、社会にダイナミックな変化を生み出してきた港湾都市の繁栄や衰退を照らし出した。

4.市場 |自然から文化への変容

マッタ゠クラークは、レストラン「フード」の運営に関わり、食や料理がしばしば作品の着想源となっていた。そんな彼にとって、肉や魚、野菜などを扱う市場は、都市の消費サイクルのなかで文化と自然との接点があらわになる重要な場所だった。彼の食への関心は、生命が人間にもたらされ、料理によって質が変わり、消化されていくプロセス、さらにはこのプロセスによって形づくられるコミュニティーへと向かっていった。

5.ミュージアム |マッタ゠クラークを展示する

マッタ゠クラークは、外界から閉ざされたミュージアムの空間(ホワイトキューブ)に対して批判的だった。であるがゆえに都市に出て活動していた。しかし驚異的なスピードで変化していく都市において、彼のプロジェクトの舞台となった建物はほぼ残されていない。彼の「ミュージアム」に関わるプロジェクトを紹介し、本人没後の現在、マッタ゠クラークという対象を「展示」することの今日的意味を探る。

略年譜

ゴードン・マッタ゠クラーク(中央左)とジェイン・クロウフォードの結婚を祝う友人たちとともに 1978年 ©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
ゴードン・マッタ゠クラーク(中央左)とジェイン・クロウフォードの結婚を祝う友人たちとともに 1978年 ©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.

1943年

  • 6月22日、ニューヨークで双子の兄セバスチャンとともに生まれる。父は世界的なシュルレアリスム画家ロベルト・マッタ、母は同じく画家のアン・クラーク。間もなく両親は離別、母、兄とともにニューヨーク、チリ、ヨーロッパ各地で幼少期を過ごす。

1962~68年

  • コーネル大学で建築、パリのソルボンヌ大学で文学を学ぶ。

1969年

  • ニューヨークに転居。食べ物や料理をテーマにインスタレーションやパフォーマンスの発表を始める。以後、ソーホーのアーティスト・コミュニティーにおける中心人物となっていく。

1971年

  • 友人のアーティストたちと共同でレストラン「フード」を設立[~1973年]
  • メキシコ、ペルーを経由して、父マッタの故郷チリを訪れる。

1972年

  • マンハッタン、ブロンクス、ブルックリン各所の建物で、ビルディング・カット《ブロンクス・フロアーズ》を制作。

1973年

  • 「アナーキテクチャー・グループ」を結成し、「フード」などでミーティングを重ねる。
  • ニューヨークで注目され始めたグラフィティをテーマに《グラフィティ・フォトグリフス》の制作を開始。

1974年

  • ニューヨーク市が競売にかけた狭小な土地を購入し、作品《リアリティ・プロパティーズ:フェイク・エステイツ》として発表。
  • ニュージャージー州イングルウッドにあった一軒家を切断するビルディング・カット《スプリッティング》を制作。
  • この年以降、ニューヨークのほか欧米各地で数多くの展覧会に出品、またビルディング・カット、パフォーマンスなどを行う。

1975年

  • ハドソン川沿い52番埠頭の倉庫にて、ビルディング・カット《日の終わり》を制作。無断で行ったためニューヨーク市に訴追される。
  • 「パリ・ビエンナーレ1975」に参加。ポンピドゥー・センター建設のため取り壊し予定の17世紀建築に、円錐形の穴を穿つビルディング・カット《円錐の交差》を制作。

1976年

  • 兄のセバスチャンがマッタ゠クラークのスタジオの窓から転落し死去。

1977年

  • 「ドクメンタ6」(カッセル)に参加、工場の煙突を利用したインスタレーション《ヤコブの梯子》を発表。
  • アントワープにてビルディング・カット《オフィス・バロック》を制作。完成後、美術館として保存しようという運動にも関わらず、建物は取り壊された。

1978年

  • シカゴ現代美術館のオファーを受け、美術館の別館となる予定だった建物でビルディング・カット《サーカス》を制作。
  • 5月、ジェイン・クロウフォードと結婚。8月26日、膵臓がんのため死去(享年35歳)。
ホリデー編集部

ホリデー編集部からのコメント

1970年代のカルチャーに触れてみて、豊かに生きるヒントを得よう

開催場所

イベント情報

ゴードン・マッタ゠クラーク展

会期

2018年6月19日(火) 〜 9月17日(月・祝)

開館時間

10:00〜17:00(金・土曜は10:00〜21:00)
※いずれも入館は閉館30分前まで。

休館日:月曜(7/16、9/17は開館)、7/17(火)

料金

一般 1,200(900)円
大学生 800(500)円

※( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
※高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。
※キャンパスメンバーズ加入校の学生は、学生証の提示で割引料金500円でご鑑賞いただけます。

※本展の観覧料で入館当日に限り、「MOMATコレクション」(4-2F)、「瀧口修造と彼が見つめた作家たちコレクションを中心とした小企画」(2Fギャラリー4)もご覧いただけます。

問い合わせ先

03-5777-8600(ハローダイヤル)

主催者

東京国立近代美術館

オフィシャルサイト

写真一覧

  • ゴードン・マッタ゠クラーク Photo: Cosmos Andrew Sarchiapone ©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
  • 《グラフィティ:ソウル・パワー》1973年 ゴードン・マッタ゠クラーク財団&デイヴィッド・ツヴィルナー(ニューヨーク)蔵 ©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
  • 《日の終わり》1975年 ゴードン・マッタ゠クラーク財団&デイヴィッド・ツヴィルナー(ニューヨーク)蔵 ©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
  • レストラン「フード」の前で、ゴードン・マッタ゠クラーク、キャロル・グッデン、ティナ・ジルアール 1971年 個人蔵 Photo:Richard Landry©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
  • 《ニューヨーク近代美術館のためのプロポーザルNo.4》1978年 ゴードン・マッタ゠クラーク財団&デイヴィッド・ツヴィルナー(ニューヨーク)蔵 ©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
  • ゴードン・マッタ゠クラーク(中央左)とジェイン・クロウフォードの結婚を祝う友人たちとともに 1978年 ©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.
  • 《スプリッティング》1974年 ゴードン・マッタ゠クラーク財団&デイヴィッド・ツヴィルナー(ニューヨーク)蔵 ©The Estate of Gordon Matta-Clark; Courtesy The Estate of Gordon Matta-Clark and David Zwirner, New York/London/Hong Kong.