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展覧会開催!『カタストロフと美術のちから展』復興・再生への願いを込めた作品展示

2018年10月6日(土) 〜 2019年1月20日(日)

ポイント!
  • 世界各地で絶えず発生する「カタストロフ(大惨事)」がテーマ
  • 本展は、負を正に転ずる力学としての「美術のちから」に注目
  • 国内外の多くのアーティストが復興・再生への願いを込めた作品展示

オノ・ヨーコ 《色を加えるペインティング(難民船)》 1960 / 2016年 ミクスト・メディア・インスタレーション サイズ可変 展示風景:「オノ・ヨーコ:インスタレーション・アンド・パフォーマンス」マケドニア現代美術館(テッサロニキ、ギリシャ)2016年
オノ・ヨーコ 《色を加えるペインティング(難民船)》 1960 / 2016年 ミクスト・メディア・インスタレーション サイズ可変 展示風景:「オノ・ヨーコ:インスタレーション・アンド・パフォーマンス」マケドニア現代美術館(テッサロニキ、ギリシャ)2016年

東日本大震災やアメリカ同時多発テロ、リーマンショックなど世界各地で絶えず発生するカタストロフ。多くのアーティストがこのような悲劇的な災禍を主題に、惨事を世に知らしめ、後世に語り継ごうと作品を制作している。その私的な視点による記録は、マスメディアの客観性を重んじる記録とは異なり、多勢の世論の影に隠れて見えにくくなったもう1つの事実を私たちに提示する。そこにはまた、社会の矛盾や隠蔽された問題の可視化を意図するものや、個人的な喪失や悼みを表現するものもある。

カタストロフは私たちを絶望に追い込むが、そこから再起しようとする力は想像力を刺激し、創造の契機となることもまた、事実なのではないだろうか。東日本大震災以降、国内外の数多くのアーティストが復興・再生への願いを込めて理想や希望を描き、より良い社会のために新しいヴィジョンを提示しようと試みている。

戦争やテロ、難民問題や環境破壊など、危機的な問題が山積する今日において、美術が社会を襲う大惨事や個人的な悲劇とどのように向き合い、私たちが再生を遂げるためにどのような役割を果たすことができるのか。本展は、負を正に転ずる力学としての「美術のちから」について注目し、その可能性を問いかける。

開館15周年に、あらためて問う「美術のちから」

森美術館はこれまで、周年の記念展において、全人類にとって普遍的なテーマを掲げてきた。2003年の開館記念展では「幸福」をテーマにした「ハピネス」展を、10周年を迎えた2013年には「愛」に注目した「LOVE展」を開催している。15周年を迎える2018年、あえて「カタストロフ(大惨事)」をテーマに取り上げ、さまざまな問題が山積する今日の国際社会において、美術が果たす役割についてあらためて問い直す。

美術を通して社会と繋がり、変革を目指す作品を紹介

現代美術の1つの特徴に、「社会をより良くする可能性」がある。なかでも、アーティストが社会に介入し、彼らの作品や活動を通して社会に変革をもたらすことを目指す「ソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)」は、近年日本でも注目を集めている。本展では、オノ・ヨーコや宮島達男による鑑賞者参加型の作品や、「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」、社会的メッセージが込められた美術作品の良作を多数紹介し、美術と社会との繋がりについて考察する。

東日本大震災を「風化させない」

震災の記憶を伝える作品を多数紹介

2011年に発生した東日本大震災は、日本社会を大きく変えてしまっただけでなく、日本の現代美術界にも大きな影響を与えた。震災から7年が経過した今日、いまだ復興が思うように進んでいない地域もあり、一方で、私たちの震災体験や記憶は風化しつつある現状がある。本展では、この震災を契機に制作されたChim↑Pom、トーマス・デマンド、池田学など約10作家の作品を紹介することで人々の記憶を蘇らせ、議論を再燃させることを目指す。

現代美術のスーパースターから注目の若手作家、日本初公開の作家まで約40組の作品を展示

現代美術界で最も権威ある祭典、ヴェネチア・ビエンナーレやドクメンタに参加経験を持つトーマス・ヒルシュホーン、モナ・ハトゥム、アイザック・ジュリアン、畠山直哉、宮本隆司といったベテラン作家から、ストリート・アート界のスターであるスウーン、加藤翼や平川恒太など気鋭の若手まで、国内外を問わず幅広い層の作家が参加。さらには、ヒワ・Kやヘルムット・スタラーツなど、日本初公開となる作家も紹介する。

スウーン 《水没した母なる地》 2014年 ミクスト・メディア・インスタレーション サイズ可変 作家蔵 展示風景:「スウーン:水没した母なる地」ブルックリン美術館、2014年 撮影:トッド・シーリー *参考図版
スウーン 《水没した母なる地》 2014年 ミクスト・メディア・インスタレーション サイズ可変 作家蔵 展示風景:「スウーン:水没した母なる地」ブルックリン美術館、2014年 撮影:トッド・シーリー *参考図版

展覧会に先行して「プレ・ディスカッション・シリーズ」を展開

本展では、惨事と現代美術の関係を考察するには、実際の事例や経験、言説を含めて考えることが不可欠であると考え、展覧会開催前に「プレ・ディスカッション・シリーズ」と題したトーク・イベントを5回にわたり実施。それぞれ「大惨事におけるアートの可能性」、「写真や映像で惨事を表現すること:記録、芸術性、モラル」、「阪神・淡路大震災から20余年:体験とその継承」、「フクシマ2011-2018」、「美術かアクティビズムか」をテーマに議論がおこなわれた。外部の有識者、専門家、当事者、アーティストなどを招聘しておこなわれたこれらの議論は、展覧会の一部として会場で紹介されるだけでなく、図録にも掲載される。また、会期中には議論の総括をおこなうシンポジウムも予定している。

宮本隆司 《KOBE 1995 After the Earthquake―神戸市長田区》 1995年 ゼラチン・シルバー・プリント 51×61 cm 所蔵:森美術館、東京
宮本隆司 《KOBE 1995 After the Earthquake―神戸市長田区》 1995年 ゼラチン・シルバー・プリント 51×61 cm 所蔵:森美術館、東京

セクション1

セクション1では、地震、津波などの天災や事故や戦争といった人災から、個人的な悲劇を表現した作品までを幅広く紹介しながら、「美術が惨事をどのように描いてきたのか」に焦点を当てる。惨事を扱った作品と一言で言ってもその手法はさまざまで、写実、フィクション、極端な抽象化など多岐に渡る。また、2008年の世界金融危機を引き起こした現代のグローバル化したバーチャルな資本や、福島の原子力発電所事故などに見られる放射能汚染など、目に見えない脅威を可視化する作品も含まれる。惨事を美やユーモアを混じえて表現することができる美術の特性に触れながら、作家が惨状や恐怖をどのように記録・再現し、他者と共有して未来に語り継ごうとしているのかについて考察する。

アイザック・ジュリアン 《プレイタイム》 2013年 3チャンネル・HDビデオ・インスタレーション、5.1サラウンドサウンド 64分12秒 Courtesy: Victoria Miro, London
アイザック・ジュリアン 《プレイタイム》 2013年 3チャンネル・HDビデオ・インスタレーション、5.1サラウンドサウンド 64分12秒 Courtesy: Victoria Miro, London

セクション2

セクション2では、破壊から創造を生みだす「美術のちから」を紹介する。大惨事や悲劇は私たちを絶望へと突き落とすが、その一方で惨状が作家の作品制作の契機となることも事実だろう。アーティストの豊かなイマジネーションによって制作された、再生、復興、より良い社会が表現された作品は、私たちに理想の未来について考える想像力を与える。
美術は、医学と異なり大惨事に対しての即効薬にはならないかもしれないが、代わりに社会に対する長期的な治療薬となりえるのではないだろうか。希望のメッセージを伝達するものや、抑圧に対する団結のためのツールとして機能するもの、チャリティとして経済的な貢献をするもの、傷ついた心を癒すものなど、美術にはさまざまな力がある。このような美術が持つ、負を正に転ずる「ちから」に注目し、その可能性を問いかける。

池田 学 《誕生》 2013-16年 ペン、アクリル・インク、透明水彩、紙、板にマウント 300×400cm 所蔵:佐賀県立美術館 デジタルアーカイブ:凸版印刷株式会社 Courtesy: Mizuma Art Gallery, Tokyo / Singapore *11月下旬から展示予定
池田 学 《誕生》 2013-16年 ペン、アクリル・インク、透明水彩、紙、板にマウント 300×400cm 所蔵:佐賀県立美術館 デジタルアーカイブ:凸版印刷株式会社 Courtesy: Mizuma Art Gallery, Tokyo / Singapore *11月下旬から展示予定

※アーティスト・プロジェクト名/姓のアルファベット順

シヴァ・アフマディ
アイ・ウェイウェイ(艾未未)
ミロスワフ・バウカ
坂 茂
ミリアム・カーン
CATPC&レンゾ・マルテンス
シェバ・チャッチ
Chim↑Pom
トーマス・デマンド
クリストフ・ドレーガー
藤井 光
フェリックス・ゴンザレス=トレス
畠山直哉
モナ・ハトゥム
平川恒太
トーマス・ヒルシュホーン
堀尾貞治
ハレド・ホウラニ
ホァン・ハイシン(黄海欣)
HYOGO AID ’95 by ART
池田 学
アイザック・ジュリアン
ヒワ・K
加藤 翼
オリバー・ラリック
エヴァ&フランコ・マッテス
宮島達男
宮本隆司
オノ・ヨーコ
ジョルジュ・ルース
カテジナ・シェダー
ヴォルフガング・シュテーレ
ヘルムット・スタラーツ
スウーン
高橋雅子(ARTS for HOPE)
武田慎平
田中功起
ジリアン・ウェアリング
米田知子
ムハマッド・ウチュプ・ユスフ

開催場所

イベント情報

カタストロフと美術のちから展

開催期間

2018年10月6日(土) 〜 2019年1月20日(日)

開催時間

10:00〜22:00
火:10:00〜17:00
※2019年1月1日(火・祝)は22:00まで
※いずれも入館は閉館時間の30分前まで
※会期中無休

料金

  • 一般:1,800円
  • 学生(高校、大学生)1,200円
  • 子供(4歳〜中学生)600円
  • シニア(65歳以上)1,500円
    ※本展のチケットで展望台 東京シティビューにも入館可(スカイデッキを除く)
    ※スカイデッキへは別途料金がかかる

問い合わせ先

03−5777−8600(ハローダイヤル)

写真一覧

  • アイザック・ジュリアン 《プレイタイム》 2013年 3チャンネル・HDビデオ・インスタレーション、5.1サラウンドサウンド 64分12秒 Courtesy: Victoria Miro, London
  • 宮本隆司 《KOBE 1995 After the Earthquake―神戸市長田区》 1995年 ゼラチン・シルバー・プリント 51×61 cm 所蔵:森美術館、東京
  • 池田 学 《誕生》 2013-16年 ペン、アクリル・インク、透明水彩、紙、板にマウント 300×400cm 所蔵:佐賀県立美術館 デジタルアーカイブ:凸版印刷株式会社 Courtesy: Mizuma Art Gallery, Tokyo / Singapore *11月下旬から展示予定
  • スウーン 《水没した母なる地》 2014年 ミクスト・メディア・インスタレーション サイズ可変 作家蔵 展示風景:「スウーン:水没した母なる地」ブルックリン美術館、2014年 撮影:トッド・シーリー *参考図版
  • オノ・ヨーコ 《色を加えるペインティング(難民船)》 1960 / 2016年 ミクスト・メディア・インスタレーション サイズ可変 展示風景:「オノ・ヨーコ:インスタレーション・アンド・パフォーマンス」マケドニア現代美術館(テッサロニキ、ギリシャ)2016年