“木彫りの聖地”井波で取り戻す心の平穏
富山県南砺市に「井波[いなみ]」という町があります。
ここは今を遡ること600年以上も前の1390(明徳元)年、真宗大谷派の古刹「瑞泉寺[ずいせんじ]」が建立されたのを機に誕生した町です。
瑞泉寺は明治時代初期に火災で伽藍のほとんどを焼失しますが、1885(明治18)年に多くの宮大工や彫刻師の手で再建されました。
その際、京都から招いた彫刻師の教えを受けた宮大工たちが技術を受け継ぎ、今に伝わる「井波彫刻」へと進化させます。
井波の彫刻師たちは昭和に入ってからも京都の東本願寺や東京の築地本願寺、日光東照宮といった寺社の彫刻を数多く手がけます。
その一方で一般住宅の欄間や置物などの彫刻も盛んになり、現在では民家の室内彫刻が主流となりました。
井波の町には今でも300人近い彫刻師が居住し、住宅欄間や獅子頭、置物、パネルといった木彫刻品を製作しています。