寺町【築地】&離れ小島【佃島・石川島】へ~築地は昔海だった~
築地案内人:本願寺の僧侶 南明/佃の渡し 荘吉 天明9年(1789年)
朝日が昇り、築地の寺の屋根を明るく染める。江戸湾に面したこの地からは、佃島の漁師たちが沖を行き来する様子や、上方からの菱垣廻船が隅田川へ入っていく様子を眺めることができる。
その光景に溶け込むように立ち並ぶ寺社から朝の読経の合唱が聞こえてくる。その声におされるように、付近の武家屋敷から江戸城や番所へ出勤していく武士が急ぎ足で歩いている。
江戸市中を旅するお彩は、この付近を案内してくれる人を探していた。
すると前方から一人の僧侶が檀家の法事を終えて帰ってきた。
お彩「お坊様、失礼いたします。築地御坊(築地本願寺)はどちらになりますか?」
南明「この道を二丁歩いて右に曲がったところでございます。あなたは旅のお方で?」
お彩「左様でございます。このあたりに不慣れなものでして」
南明「そうですか。では付近を少しご案内して差し上げましょう。私は本願寺の僧侶、南明と申します」
お彩「ありがたいことでございます」