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展覧会開催!自由な画風と筆遣いで人気を博した江戸時代の天才絵師『横山華山』の作品展

2018年9月22日(土) 〜 2018年11月11日(日)

ポイント!
  • 江戸時代後期の京都で活躍した絵師“横山華山”の回顧展
  • 弟子の作品、海外から里帰りした作品などを含む約100点が展示
  • 自由な画風と筆遣いによる多彩な画業を系統立てて紹介

横山華山《宝船図》天保8(1837)年 京都府(京都文化博物館管理)
横山華山《宝船図》天保8(1837)年 京都府(京都文化博物館管理)

横山華山(よこやまかざん:1781/4〜1837)は、江戸時代後期の京都で活躍した絵師だ。諸画派に属さず、画壇の潮流に左右されない自由な画風と筆遣いで人気を博した。
曾我蕭白に傾倒し、岸駒に入門した後、呉春に私淑して絵の幅を広げた華山は、多くの流派の画法を身につけ、作品の画題に合わせて自由自在に筆を操った。
江戸の絵師たちにも大きな影響を与え、その名声は当時日本中に広がっていた。
また、海外の研究者やコレクターからも評価され、欧米の美術館に優品が所蔵されている。

華山の多彩な画業を系統立てて紹介する初めての回顧展

曾我蕭白や弟子たちの作品も含め会期中あわせて約100点の展示で、かつて有名であったにも関わらず、忘れ去られてしまった画家の全貌を掘り起こし、その魅力に光を当てる。ボストン美術館や大英博物館など海外に渡った作品も里帰りする。

展覧会構成

蕭白を学ぶ ─華山の出発点─

横山家は曾我蕭白と交流があり、華山は幼少の頃から蕭白の作品に直接触れる機会を得、彼に傾倒した。こうした「蕭白経験」の日々は、奇想の画家と呼ばれる蕭白の自由で斬新な画風を華山へと受け継がせ、それがのちの彼の画業の軸ともなった。展覧会のプロローグでは、華山の原点となった蕭白風の作品をはじめ、初期の作品を紹介する。

人物 ─ユーモラスな表現─

華山は人物表現を得意としており、じつに多くの作品が残されている。たとえば中国の故事を題材に取り上げつつ、そこに同時代の人々の日常生活を巧みに写し出している。人目を驚かせる趣向や、ユーモアに満ちた人物の描き方など、華山ならではの多彩な人物表現に注目したい。

花鳥 ─多彩なアニマルランド─

龍や鶴をはじめ多くの動物や花々を描いた作品群。どれも巧みに描かれ、華山の多才ぶりが窺える。特に、虎の絵を得意とする岸駒の弟子だったこともあり、華山も虎を題材に多くの絵を手掛けている。花鳥画にみる迫真性に満ちた描写や、機知に富んだ表現は見逃せない。

山水 ─華山と旅する名所─

華山は、富士山や天橋立、二見浦といった日本の風景だけでなく、西湖や蘭亭曲水など中国の景色も描いている。山水の画題には、見ごたえのある大作が多いのが特徴だ。また、華山の名を一躍世に知らしめたのが、《花洛一覧図》。京都の町並みを俯瞰的に描いた摺物で、当時の知識人として知られる斎藤月岑(さいとうげっしん)が『武江年表(ぶこうねんぴょう)』で伝えているように、江戸の絵師たちにも大きな影響を与えた。

風俗 ─人々の共感─

華山がその真骨頂を発揮していたのが風俗画だ。伝統的な画題に独自の視点と表現で新たな息吹をもたらし、身近な場所や文化、行事をつぶさに描いて、人々の共感を得た。とりわけ祭礼図は華山の独断場で、祇園祭、やすらい祭、賀茂の競馬などを画題に数多くの大作を残している。

見どころ① 天才は天才を呼ぶ!

蕭白と華山がそれぞれ描いた《蝦蟇仙人図(がませんにんず)》をみると、落款や印章を見ることなしに、どちらが蕭白の作品かわからないだろう。華山は若くして蕭白と比較し得るほどの才能を発揮していた。会場では貴重な優品を並べて展示し、二人の天才絵師の競演を鑑賞できる。

見どころ② 海外から優品が里帰り!

横山華山《寒山拾得図》ボストン美術館 William Sturgis Bigelow Collection  Photograph © Museum of Fine Arts, Boston
横山華山《寒山拾得図》ボストン美術館 William Sturgis Bigelow Collection  Photograph © Museum of Fine Arts, Boston

明治時代初期に華山の優品は海を渡り、現在、ボストン美術館に13点、大英博物館に6点が収蔵されている。その背景には、フェノロサやビゲローらによって華山の作品が海外で評価されていたことがある。ボストン美術館からは、縦3メートル、幅2メートルの蕭白風の大作《寒山拾得図》をはじめ5点、大英博物館からは3点が里帰り。うち7点が日本初公開となる。

見どころ③ その自由さからくる近代性を見よ!

横山華山《城州白河之図》文化10(1813)年 個人蔵
横山華山《城州白河之図》文化10(1813)年 個人蔵

横山華山《宝船図》天保8(1837)年 京都府(京都文化博物館管理)
横山華山《宝船図》天保8(1837)年 京都府(京都文化博物館管理)

同時代の伝統や形式を重んじる諸画派に比べ、自由な表現が華山の魅力だ。たとえば《城州白河之図》は、画面の真ん中に大胆に配置された大きな木に目が奪われる。正面から見た宝船という奇抜な構図の《宝船図》は、亡くなる2カ月前に描いた貴重な作品。《富士山図》は、明治時代以降の作家の作かと見間違うような筆遣いとなっている。《唐子図屛風》に表現された人物の顔の陰影などは西洋風で近代的な画風を感じさせる。

横山華山《唐子図屛風》左隻部分 文政9(1826)年 個人蔵
横山華山《唐子図屛風》左隻部分 文政9(1826)年 個人蔵

見どころ④ 風俗画の細かな描写は華山の真骨頂。見ればわかる!

横山華山《祇園祭礼図巻》上巻部分 天保6-8(1835-37)年 個人蔵
横山華山《祇園祭礼図巻》上巻部分 天保6-8(1835-37)年 個人蔵

横山華山《祇園祭礼図巻》下巻部分 天保6-8(1835-37)年 個人蔵
横山華山《祇園祭礼図巻》下巻部分 天保6-8(1835-37)年 個人蔵

《祇園祭礼図巻》は、江戸時代後期の祇園祭の全貌を、上下巻約30メートルに渡って克明に描いた華山の集大成ともいえる壮大な絵巻。上巻には宵山や山鉾(やまほこ)巡行の前祭(さきまつり)、下巻には2014年に50年ぶりに復活した後祭(あとまつり)や、芸妓が練り歩く「神輿洗練物(みこしあらいねりもの)」が描かれている。神輿洗練物は現在行われていない行事で、絵画史料として詳細に描かれているものは本絵巻しか確認されていない。祇園祭のハイライトである山鉾巡行を描く絵は他に多くあるが、巡行以外の行事や、鉾の懸装品・御神体から曳き手の人々の姿まで事細かに正確に描いた唯一の作品だ。文政9(1826)年以来、200年近く休み山となっている鷹山が、現在、本絵巻を参考にして復興を目指す動きがあるなど、祇園祭の歴史を語るうえでも重要な作品だ。
《紅花屛風》は、東北や北関東の紅花の産地を二度も訪れて取材し、制作された大作で、華山の最高傑作といっても過言ではない。紅花栽培から収穫、加工品への生産過程までを正確に描いている。京都の紅花問屋による依頼品で、祇園祭の屛風祭で飾られて好評を博したという。

見どころ⑤ 貴重な資料を初公開!

蕭白と横山家の深いつながりが窺える「横山家宛書状」や、《祇園祭礼図巻》(上巻)の下絵であることが今回の調査で明らかとなった「祇園祭鉾調巻(ぎおんまつりほこしらべかん)」など貴重な資料を初公開。同じく初公開となる「斎藤月岑宛書状」は、斎藤月岑が『東都歳事記』の執筆にあたり、餅つきなど年中行事の挿図の校訂を華山に依頼したことに対する華山からの返信の書状で、今後の江戸文化史を語るうえでも必見の史料だ。

[COLUMN] 華山は知られざる画家?

横山華山は、海外では早くから評価されており、日本でも夏目漱石の小説『坊ちゃん』や『永日小品』に華山の名前が出てくるなど、明治時代までは国内でも知られていたようだ。しかし画壇の潮流に左右されず、幅広い画域をもつ規格外な面は、美術史のなかでは分類しづらく、いつしか忘れ去られ、知る人ぞ知る絵師となってしまったのかもしれない。

ホリデー編集部

ホリデー編集部からのコメント

既存の枠にとらわれない自由な精神を、それぞれの作品から感じることができそうな気がします。

開催場所

イベント情報

「横山華山」展 KAZAN - A Superb Imagination at Work(東京展)

開催期間

2018年9月22日(土) 〜 11月11日(日)
※会期中に展示替えあり
※休館日:月曜日(9月24日、10月8日、11月5日は開館)、9月25日(火)、10月9日(火)

開催時間

10:00〜18:00
(金曜日は20:00まで。入館は閉館の30分前まで)

主催者

東京ステーションギャラリー(公益財団法人東日本鉄道文化財団)、日本経済新聞社

写真一覧

  • 横山華山《寒山拾得図》ボストン美術館 William Sturgis Bigelow Collection  Photograph © Museum of Fine Arts, Boston
  • 横山華山《唐子図屛風》左隻部分 文政9(1826)年 個人蔵
  • 横山華山《祇園祭礼図巻》上巻部分 天保6-8(1835-37)年 個人蔵
  • 横山華山《祇園祭礼図巻》下巻部分 天保6-8(1835-37)年 個人蔵
  • 横山華山《宝船図》天保8(1837)年 京都府(京都文化博物館管理)
  • 横山華山《城州白河之図》文化10(1813)年 個人蔵