JR「秋の乗り放題パス」で巡った2泊3日4国宝の旅
兵庫JR「秋の乗り放題パス」で巡った2泊3日4国宝の旅
江戸時代の天守閣が今も残る城は現在12あります。 これら「現存十二天守」のうち国宝に指定されているのは姫路城、彦根城、犬山城、松本城、松江城の5つ。 このうち最近指定されたばかりの松江城は置いといて、他の「国宝四天守」を廻る旅に出てみました。 使用したのはJRグループが毎年10月14日「鉄道の日」を記念して発売している「秋の乗り放題パス」。 JRグループの普通列車が3日間乗り放題になる有難い代物で、いわば「青春18きっぷ」の秋版。 ただし3日間連続で使用するのが条件で、1日ずつ3回に分けて使ったり、1枚を3人一緒に使うことはできません。 ですが、このプランは「秋の乗り放題パス」だけでなく「青春18きっぷ」の旅にも応用できるので、これからやって来る冬春夏シーズンにも使える…ハズ。 それでは「2泊(正確には3泊)3日4国宝」の旅、果たして上手く廻れたんでしょうか?
まさに「お城界(?)の首領(ドン)」的存在。 国宝に初めて指定されたのは戦前の昭和6(1931)年。 戦後の昭和26(1951)年、新しい文化財保護法のもとで2度目の国宝になりました。 そして元号が変わった平成5(1993)年、日本で初めて世界文化遺産に登録されたのです。 今春には5年に及ぶ「平成の大修理」が完了し、別名「白鷺城」の通り、真っ白でピッカピカに生まれ変わりました。
城内はラッシュアワー!
世界遺産に登録されてるせいか世界中から観光客が朝からワンサカ訪れてます。 おかげで休日など入場制限がかかってノンビリ見学できないのがネック。 それとこれは姫路城に限った話じゃありませんが、城内は急な階段が多いので女性はミニスカートは避けたほうが無難です(←大きなお世話か!?)。
好古園
姫路城の西側に広がる日本庭園。 姫路市制百周年を記念して建造され、1992年に開園しました。 約1万坪の園内には大小9つの日本庭園が広がります。 最近できた庭園だけに、国宝姫路城と景観をマッチングさせた設計が特徴。 園内には茶室「双樹庵」とレストラン「活水軒」があり、お庭を眺めながら抹茶や食事が楽しめますよ。
姫路駅
「秋の乗り放題パス」で東京から姫路まで行くのは、いくらなんでも時間ときっぷの無駄。 なので今回は深夜高速バスを利用しました。 駅前にガストがあるので、到着したら即モーニングコーヒー。 しかも朝イチから姫路市内をウロウロできて時間も節約。 もちろん姫路までの交通手段は新幹線や飛行機などイロイロあるので、予算や旅程に合わせて選択されたしです。
姫路駅からJR西日本ご自慢の新快速で2時間10分、滋賀県の彦根駅に到着です。 国宝の天守閣は慶長12(1607)年に完成したので、ちょうど来2017年は築城410周年になります。 彦根城も明治維新で取り壊される予定でしたが、明治11(1878)年に明治天皇が彦根を訪れた際に保存を命令。 昭和20(1945)年8月15日の夜に米空軍が彦根市を空襲する予定でしたが、その日の昼間に戦争が終わり、またも延命。 そして昭和27(1952)年、天守閣などが国宝に指定され現在に至ります。 このように彦根城は類い稀な「ラッキー・キャッスル」なんですねぇ! 幸運好きの方は是非とも訪れてみてください。
なかなかいい感じに保存されています
姫路城が大改修で真っ白になったのはニュースになりましたが。 彦根城も今を遡ることジャスト20年前の平成8(1996)年に、築城以来5回目になる大改修が行われています。 外観も綺麗ですが、内部もツヤッツヤ! 国宝の味わいを存分に堪能しましょう。
彦根城博物館
彦根城に隣接する博物館。 チケット売り場の先で [←天守閣|博物館→] と入り口が分かれてます。 もとは彦根城の表御殿があった場所で、昭和62(1987)年の市制50周年を記念し、御殿の復元を兼ねて建造されました。 ここは彦根藩と井伊家などに関する資料を9万件以上も収蔵、その一部が展示されてます。 見どころは寛政12(1800)年に建てられた能舞台。 表御殿の中で唯一現存する江戸時代の建物です。
玄宮楽々園
彦根城の北東にある庭園。 大名庭園の玄宮園と、井伊家下屋敷の楽々園を総称して、こう呼ばれてます。 玄宮園は井伊家四代藩主直興が延宝5(1677)年に造園。 琵琶湖などを入れ込んだ近江八景をモチーフに造園されました。 ちなみに文化12(1815)年10月29日(11月29日)、後の大老井伊直弼が楽々園で誕生しています。
花しょうぶ通り商店街
彦根城から遥か南東、東へ向かって伸びる細い商店街。 昔の建物が比較的多く残り、城下町の情緒がなんとなく味わえる通りです。 それもそのはず。 この商店街がド真ん中を突っ切る河原町芹町地区が今年の7月25日、文化庁の重要伝統的建造物群保存地区に選定されたのです。 全国では112件目、滋賀県内では4件目、彦根市では初の選定でした。
ご当地キャラ博in彦根2016
本来ならお昼ごろ彦根城を後にし、午後には犬山城に登ってるハズだったんですけど。 ここで思わぬ刺客…いやイベントに遭遇! 全国各地から「ゆるキャラ」が一堂に集結する年に一度のビッグイベント「ご当地キャラ博in彦根」が開催されていたのです! 毎週のように「みうらじゅん&安齋肇のゆるキャラに負けない!」を見ている自分にとっては、おなじみのキャラばかり。 ここで午前中を丸ごと費やしてしまいました。
とび太くん
彦根のゆるキャラといえば「ひこにゃん」があまりにも有名ですが。 滋賀県の生んだもう一つの著名キャラが、その陰に隠れるように暗躍しています。 その名は…とび太くん(写真=右)。 琵琶湖畔名物「飛び出し注意」を促す看板「飛び出し坊や」が、リアルゆるキャラに変身! 正直に言うと…少しキモいです。
彦根駅から米原、岐阜と乗り継ぎ高山本線の鵜沼駅へ。 木曽川に架かる犬山橋を渡り、岐阜から愛知へ県境を歩いて越えます。 橋の上からは彼方の山上に犬山城の天守閣が見えてきました。 建造されたのは天文6(1537)年という日本最古の天守閣です。 ところが明治24(1891)年の濃尾大地震で城郭のほとんどが損壊。 この時、愛知県は天守閣の修理を条件に旧藩主の成瀬家へ譲渡。 このため平成16(2004)年に所有権が財団法人へ移管されるまで、100年以上も個人が所有していた珍しいお城です。 昭和10(1935)年に旧国宝指定、戦後の昭和27(1951)年に2度目の国宝となりました。
川の流れのように
国宝四天守の中で最も古く、かつ最も小さい天守閣。 姫路城や彦根城のような規模や迫力はありませんが。 小さければ小さいなりの味わいがあるわけで。 最上階(四階)の望楼から木曽川の流れを眺めているだけで、悠久の歴史が風になって身体を吹き抜けていくかのようです。
有楽苑
名鉄犬山ホテルの裏手に広がる広大な日本庭園「うらくえん」。 名称の由来は織田信長の弟、織田有楽斎に因んだものです。 NHK大河ドラマ「真田丸」では井上順が演じてますね。 大坂冬の陣の後、有楽斎は京都に建仁寺の子院である正伝院を再建。 その院内に建てた茶室「如庵」と、正伝院の書院が移築されています。 苑内では一服600円で抹茶を味わえますよ。
もう一つの国宝「如庵」
有楽斎が建てた茶室「如庵」は昭和11(1936)年、国宝に指定されました。 京都山崎妙喜庵内の待庵、大徳寺龍光院内の密庵と並ぶ国宝茶席三名席のひとつで、茶道文化史上とても貴重な遺構です。 出来てから400年もの間、如庵は所有者の変遷とともに各地を転々。 昭和47(1972)年に名鉄が買収し、保存のために庭園「有楽苑」が造られました。 一つの市に国宝建造物が二つもあるのは非常に珍しいそうです。
本町通り
犬山城の正面から南へ一直線に伸びる城下町のメインストリート。 伝統的な町家が軒を連ねる街並みからは、城下町ならではの情緒を感じることができます。 また、古い町家をリノベーションしたり、往時のデザインを踏襲したカフェや食堂も結構あります。 温故知新ってやつですかね?
美濃太田駅のホームに駅弁売りを見た!
鵜沼駅から美濃太田駅と多治見駅を経由して松本駅へ向かう途中のこと。 美濃太田駅で下車すると、なんとホームに駅弁売りが立ってるではありませんか! 一昔前は大きな駅ならごく普通に見られた光景なのですが。 最近じゃ特急列車はおろか普通電車でも窓が開かない車両ばかりになり。 駅弁の立ち売りはガンガン姿を消し、今では全国でも美濃太田駅を含めて数えるほどしかいなくなってしまいました。
迷わず購入!限定品「ておけ寿司」
製造・販売しているのは地元のお弁当屋さん「向龍館」。 品揃えはレギュラー「松茸釜飯」と限定品「ておけ寿司」の2種類。 たまたま「ておけ寿司」があったので迷わず購入しました。 陶製(!)の桶型容器に酢飯を詰め、上に寿司ネタを散らし、素焼きのフタをかぶせ、掛紙をかけ、割りばしを置き、ひもでしばる…まさに絵に描いたような王道の駅弁! 甘めのシャリと甘めに味付けされたネタの相性もバッチリでした!
松本駅に到着した時には日が西に傾き。 松本城へたどり着いた時にはトップリと日が暮れて。 入城はおろか既に城郭がライトアップされてる時間帯に! 残念ながらお城に登ることはできませんでした。 彦根でゆるキャラと戯れていなければ、松本城の入城時間に間に合っていたかも…。 実を言えばン年前、松本城に登城したことがあるので「松本城は今回いっかな…」みたいな気持ちがあったのは事実。 ゆるキャラと過ごす時間と引き換えに、松本城への登城を諦めた形になりました。
さらば松本また来る日まで!
というわけで「二泊三日四国宝」の旅、なんとか格好だけでも完遂できました! だがしかし! 松本での滞在時間が1時間半ほどしかなく。 街並みをひと眺めしただけでトンボ帰り…じゃなくトンボ帰京したのでした。 でも松本は東京から比較的近いので、また訪れる機会もあるでしょう。 その時まで松本よ、さようなら!
山野草
とはいえ、こんな終わり方だとなんか味気ないので。 ここは偶然立ち寄った立ち食い蕎麦屋「山野草」を紹介しましょう。 松本駅1番線ホームにあるこの店、やたら「信州そば」をアピール。 信州長野県といえば確かに蕎麦の名産地ではありますが、なにもこんなにハードル上げなくても…。 蕎麦っ食いとしては見逃せないところです。 階段脇の目立たないところにひっそり佇んでますが。 お客さんがひっきりなしに訪れて来ます。
3分待っても「特上生そば」を食すベシ!
蕎麦は普通の駅そば(1分待ち)と特上生そば(3分待ち)の2種類。 でも、ほとんどのお客さんが「特上」を注文。 そのたびに厨房の小母ちゃんが「3分お待ちくださ〜い」と掛け声。 麺は挽きぐるみの田舎そばで、極細うどんを黒く着色しただけの駅そばとは味わいも食感も全く別物。 つゆも甘過ぎず、醤油の風味を引き出した出汁が効いてます。 駅の立ち食い蕎麦にしては、なかなかのレベル。 「看板に偽りナシ」でした。