「仙崎」という名の小さな岬で美味しさと優しさに包まれるひととき
山口「仙崎」という名の小さな岬で美味しさと優しさに包まれるひととき
山口県長門市の北側に「仙崎」という小さな岬があります。 古くから漁業が盛んで、蒲鉾の産地としても有名なところ。 地場の新鮮な魚介類を賞味できる和食店も点在しています。 そしてここ仙崎は明治時代の天才童謡詩人、金子みすゞの故郷。 作品が小学校「国語」の全教科書に掲載されている“国民的作家“です。 海鮮の美味とみすゞの優しさに包まれるひとときを仙崎で過ごしてみませんか?
JR美祢線長門市駅から無精ヒゲのようにピョコンと飛び出した枝線の終点が最寄駅。 とはいえ新幹線も高速道路も空港も近くになく、とても不便な場所ではあります。 しかし苦労してたどりついた分だけ、得られる旅情もひとしお…ということもありますし。 萩観光に合わせて訪れてみては如何でしょうか?
仙崎駅観光案内所
駅舎には観光案内所が併設されています。 目を引くのは壁一面に設えられたモザイク画。 特産品であるカマボコの板を加工したもの。 一枚一枚に観光客がメッセージを書き込んています。 また、駅舎内には金子みすゞに関する情報コーナーもあります。
金子みすゞは明治36(1903)年、ここ仙崎で生まれました。 同記念館は生誕100年目の誕生日である平成15(2003)年4月11日にオープン。 みすゞの実家が営んでいた本屋「金子文英堂」の跡地に建てられたもので、本館と金子文英堂の二つの建物から構成されています。
作家人生わずか3年で綴った詩の数なんと500編あまり! 26歳で自死した薄幸の天才詩人の生涯に感涙
みすゞが童謡を書き始めたのは20歳の頃。 折しも童話童謡雑誌が続々と創刊され、隆盛を極めていた大正時代末期。 雑誌四誌に投稿した作品が全て掲載される鮮烈デビューを飾ります。 しかし、好事魔多し。 23歳で結婚したみすゞは文学に理解のない夫から詩作を禁じられ断筆。 その後、大病を患い離婚。 娘の親権を前夫から守るため昭和5(1930)年、自ら命を絶ちます。 26歳という若さでした。
こだまでしょうか
没後、作品は散逸し、みすゞの名は「幻の童謡詩人」として歴史に埋もれることに。 それから約半世紀後の昭和59(1984)年、児童文学者の矢崎節夫氏(現同館館長)が遺稿集を発掘し出版。 その名が再び日の当たる場所へ帰ってきました。 最近では東日本大震災の時、テレビで放送されたACジャパンの公共CM「こだまでしょうか」が話題を呼びました。 youtubeのリンクを張っておきましたので、ぜひご覧ください。
みすゞ通りで詩を読み進める僥倖
仙崎駅前から金子みすゞ記念館を経て北に向かって伸びる一筋の道は「みすゞ通り」と命名されています。 出色なのは、通りに並ぶ家々の門前や軒下に、各家が最もお気に入りの詩を掲げていること。 それらをひとつひとつ丹念に読み進んで行くうち、やがて対岸に青海島という大きな島を臨む狭い海峡に突き当たります。 もし心にポッカリと穴が空いているのなら、海を見る頃には優しさで満たされているに違いありません。
仙崎で食事をしたことはないのですが、地元グルメの紹介サイトで「これだ!」と思える店をピックアップしてみました。 まずは店主が仙崎漁港で鮮魚の仲買人をやっている「きらく」。 地元の名店のようで芸能人など著名人が多数訪れています。 早朝、仙崎市場で競り落した魚介類を店内の大型生け簀にブチ込み、御注文と同時に引き上げて客の面前で捌くという新鮮さ。 お値段が気になるところですが、ウェブサイトで確認してみると「相応かな?」って感じですね。
仙崎旬宣言の発令と同時に姿を表す「仙崎ぶとイカ」とは何者?
透き通るような美しい姿、柔らかい身、そして美味から「イカの女王」と称されるケンサキイカ。 魚市場に水揚げされた中でも、一パイずつ丁寧に釣り上げられたものだけが「仙崎イカ」の称号を許されます。 旬を迎える10〜12月ごろ、熟練の目利きで構成される選定員が「旬に入った」と認定した時、漁協が「仙崎旬宣言」を発令。 その旬の仙崎イカだけを特に「仙崎ぶとイカ」と呼ぶのだそうです。
民宿も経営しているので宿泊する手もアリ!
和食処の上階は民宿です。 1泊2食で大人一人7000円と値段も手頃。 1泊朝食のみ(4700円)にし、夕飯は階下の「きらく」で舌鼓…というプランも美味しそうです。
上記「きらく」の隣にある釜めし屋さんです。 でも、こちらのほうが角に大きく釜の看板を掲げてあるので目立ってます。 看板メニュー(←文字通り)の釜めしはウニ、サザエ、タイ、アナゴ、イカ、タコなど全て仙崎漁港で水揚げされた新鮮な魚介類を使用。 また、ツウな漁師さんから直接仕入れた生きたイカを水槽で泳がせ、注文が入るたびに調理する活イカ料理も魅力的です。
仙崎漁港の反対側、半島の西岸に位置する割烹旅館。 というか和風オーベルジュといったほうが相応しいかも。 旅館ではありますが、もちろん食事だけの利用もOKです。
看板メニューは「月替わり創作会席」
店主が自ら鮮度にこだわって仕入れた魚介類と野菜を材料に腕を振るう創作懐石料理。 旬の味を生かすべく、内容は四季折々で替わるそう。 ランチタイムとディナータイム両方で提供していますが、予約するのが無難でしょう。 ほかにもウニ釜めしや仙崎イカの刺身など、地場産の素材を用いた料理も。 宿泊プランでは夕食にフグやアワビを取り入れたコースもあります。
あまり肩肘張らず、漁港に揚がった海産物をストレートに味わいたい! という向きには、こちらの「白菊」がオススメ。 なにせ仙崎漁港ビルに隣接しているだけに食材の鮮度は折り紙付き!? ただし、実直すぎる店だけに雰囲気には多少目を瞑る必要があるかも。 喫茶店だった店舗を居抜きで使っているような内装は、なかなかパンチが効いてます。 ちなみに仙崎漁港、実は下関漁港に次いで山口県内2番目の水揚げ高を誇る超ビッグな漁港なのでした!
店内の雰囲気はエキセントリックだけど漁港直送のメニューはダイナミック!
和食処というより定食屋。 膳の中央に1箱ドーンと鎮座しているウニ定食は2000円ぐらいから時価で。 サザエの壺焼きやイカ焼きなど焼き物も充実。 お酒が進むメニューが勢ぞろいしています。 もちろん食堂だけにステーキ(←当然“肉”)定食やカレーライスもあるので、蛭子能収さんも安心です。
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